売却中に知らない不動産会社がDM・手紙投函・訪問|勧誘に乗ると違約金のリスク

売却中に知らない不動産会社がDM・手紙投函・訪問|勧誘に乗るリスク

マンション・家の売却中、媒介契約を結んだ覚えのない不動産会社から、突然DMが届いたり、手紙がポストに投函されていたり、営業マンが自宅を訪問してきたり…。「なんでウチが売却中だと知っているの?」と不安になった売主さまも多いのではないでしょうか。

結論からお伝えします。この勧誘は、売主さまの物件情報を不動産会社専用のネットワークで知った会社による「横取り営業」です。そして、この勧誘に乗ってしまうと、売主さまが違約金や費用償還を請求されるリスクがあります。

この記事を読めば、知らない不動産会社が売却中の売主さまへ接触してくる仕組みと、実際に届いた手紙の実例、勧誘に乗った場合のリスク、正しい対処法までわかります。

▼この記事でわかること(結論)
  • 勧誘の正体はレインズ情報を悪用した横取り営業
  • 勧誘に乗ると違約金・費用償還のリスクがある
  • 手紙1回はセーフでも注意後の再勧誘は宅建業法違反
  • 基本は放置・しつこければ都庁やレインズへ相談

この現場を何度も経験してきた不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は財閥系大手仲介会社から中小の不動産会社まで複数の会社で経験を積み、現在は売却専門の「真っ直ぐ不動産」を運営しています。大手・中小の両方を知るからこそ語れる「突然の勧誘の正体」をお伝えします。

※本記事は2026年7月の最新情報に対応しています。

売却中の売主さまに知らない不動産会社がDM・訪問をしてくる理由

まずは、なぜ売却中だと知られているのか、その仕組みから見ていきましょう。

レインズ登録で物件情報は多数の不動産会社に共有される

売主さまが不動産会社と専任媒介契約・専属専任媒介契約を締結すると、物件情報は「レインズ」という不動産会社専用のネットワークシステムへ登録されます。レインズに登録されると、東京都だけで2万社以上ある不動産会社がこの情報をキャッチできるようになります。

▶︎媒介契約の種類とレインズ登録の仕組みは『媒介契約とは?3種類の違いと締結の流れ|売却のプロが解説』で詳しく解説しています。

情報をキャッチした不動産会社は、自社で顧客登録しているお客さまへアプローチしたり、ネット広告などで新しい買主さま候補を探してくれます。買主さまからの仲介手数料を目的とした行動ですが、これはレインズの正しい活用方法です。不動産会社のネットワークで情報が拡散されるほど、売主さまは良い条件での成約を勝ち取りやすくなります。

情報を悪用して売主さまへ直接勧誘する会社がある

ところが、このレインズ情報を悪用する不動産会社が存在します。

売主さまがすでに他社と媒介契約を締結していることをレインズで知りながら、その売主さまへ直接DM・手紙・訪問で接触し、「媒介契約を乗り換えませんか?」と勧誘して、横からお客さまを奪おうとするのです。業界ではこの行為を「抜き行為」と呼びます。媒介契約を獲得している不動産会社からお客さまを「抜く」からです。

この抜き行為が狙うのは、1社にしか売却を依頼できない専任媒介契約・専属専任媒介契約の売主さまです。複数の会社へ重ねて依頼できる一般媒介契約であれば、たくさんある会社の中の1社として加わるだけなので、横取りにはなりません。ゆめ部長が勤務していた財閥系大手では、これを「一般参加」と呼んでいました。その店舗だけの呼び方だったかもしれませんが、事実として、そう呼ばれていました。

なお、情報の入口はレインズだけではありません。レインズに登録された物件情報は、各不動産会社の広告活動を通してSUUMOなどのポータルサイトや、他社の自社Webサイトにも掲載されます。つまり、勧誘してくる会社は「レインズで見た」とは限らず、ポータルサイト経由で売却中だと知ったケースもあります。実はこの「情報源の逃げ道」が、後で説明するルール違反の追及を難しくしている原因にもなっています。

いずれにしても、売却中の売主さまに突然届くDM・手紙・訪問の正体は、ほとんどがこれです。「なんで知っているの?」の答えは、売主さまの物件情報が不動産会社のネットワークと広告に公開されているから、なのです。

実際に売主さまへ届いた手紙・訪問の実例

ここからは、ゆめ部長が媒介契約を締結していた物件で実際にあった2つの実例を紹介します。売主さまに実物の手紙を提供してもらいましたので、どんな文面が届くのかを見てみましょう。

実例1:手紙を持って売主さまを直接訪問してきた営業マン

1つ目は中古戸建の売却現場です。ゆめ部長が売主さまと専任媒介契約を締結していたにもかかわらず、他社の営業マンが手紙を持って売主さまの自宅を直接訪問してきました。売主さまと信頼関係を構築できていたため、営業マンが置いていった手紙をそのまま提供してもらえました。実物がこちらです。

訪問営業マンが置いていった手書きの勧誘手紙

手書きで読みづらいため、文章を書き起こします。

突然お伺いしてしまい申し訳ありません。

以前ご自宅をご売却に出されていらっしゃったと思いますが、もうご売却のご意向はなくなってしまったのでしょうか。

私のお客様で内覧のご希望を頂いていたのですが、お仕事の関係上なかなかお時間を作れずにいらっしゃったのですが、この度やっとお時間を作れそうとのご連絡がありました。

ただ、現在は売却を取り締めたとお聞き致しまして、もうお気持ちは変わらないのかなぁと思いまして、立ち寄らせて頂きました。

もし、お時間ございましたら、下記携帯までご連絡頂けますと幸いです。よろしくお願い致します。 

担当者名●● 090-●●●●-●●●●

原文そのままです。この手紙、売主さまはどう読み解けばいいのでしょうか?

注目してほしいのは、表現の特徴です。「以前売却に出されていたと思いますが」と記憶が曖昧な体裁を取り、「売却を取り締めたとお聞きしまして」と伝聞で書き、お客さまについては時間を作れ「そう」と、絶対に見るとは言っていない逃げ道のある表現になっています。専任媒介契約を結んでいることを知らない体裁を、慎重に作り込んだ文章だとわかります。

時系列でわかる計画的な勧誘

「本当にお客さまがいて、たまたま訪問しただけでは?」と思うかもしれません。しかし、この訪問が計画的だったと断定できる根拠があります。時系列を追ってみましょう。

  • 3月11日:ゆめ部長がレインズへ物件情報を登録
  • 3月12日:この営業マンの不動産会社が自社Webページへ物件情報を掲載
  • 3月13日:営業マンが売主さまの自宅を訪問

しかも、この会社からは自社Webページへ掲載するための広告掲載承諾書がゆめ部長宛てに送られてきて、訪問の前に返送も済んでいました。承諾書を返送しないと広告できないルールだからです。つまり、ゆめ部長が窓口の不動産会社だと知ったうえで、売主さまを直接訪問してきたわけです。手紙の「売却を取りやめたとお聞きしまして」が作り込んだ体裁であることは、この1枚からも裏づけられます。

さらに決定的なのは、その後の行動です。手紙には「お客さまを紹介したい」と書いてありましたから、ゆめ部長へ内覧依頼の連絡をすれば目的を達成できるはずです。ゆめ部長は囲い込みができないシステム「オープン売却プラン」で売却をサポートしていたのですから、断られる心配もありません。それにもかかわらず、この営業マンからの内覧依頼は1度もありませんでした。案内が目的ではなく、媒介契約の横取りが目的だったことがわかります。

実例2:ポストに投函されたDMの手口

2つ目はマンションの売却現場です。ゆめ部長の専任物件のポストへ、他社からのDMが投函されていました。売主さまが呆れた様子で写真を送ってくださったのがこちらです。

ポストに投函された他社からの勧誘DMの実物

こちらも文章を書き起こします(社名・個人情報は●●としています)。

突然のお手紙失礼致します。●●コンサルティングの●●と申します。

●●様のご所有されております『●●マンション●●号室』ですが、ご購入を希望されているお客様を、直接ご紹介させていただけないでしょうか。他社様を通してご案内する事も可能なのですが、情報伝達等の手続きが煩雑になってしまいますと、購入意欲にも少なからず影響いたしますので、直接お話しを進めることが出来れば双方のメリットにつながるのではと考えております。

私どものスタンスとして、常にオーナー様のメリットを最重視し、売買・賃貸問わずに保有物件の最大限の活用法をご提案させて頂いております。●●様のご希望に合わせ、売買・賃貸同時募集のご提案等、柔軟かつ積極的に対応させていただきます。もしご興味を持っていただけましたら是非一度、私宛にご連絡いただけますでしょうか?

この手紙のポイントは「直接ご紹介させていただけないでしょうか」という部分です。

本当に購入希望のお客さまがいるなら、窓口である不動産会社=ゆめ部長へ内覧予約を入れれば案内できます。手紙にも「他社を通して案内することも可能」と書いてあるとおりです。それをせずに売主さまへ直接接触するのは、案内ではなく媒介契約の乗り換えが目的だからです。「手続きが煩雑」「購入意欲に影響」という理由づけは、直接取引へ誘導するための口実と考えるのが自然でしょう。

「とりあえず内覧」で信用させる手口もある

「でも、乗り換えた後に本当に案内してくれるなら、結果的に良いのでは?」と思った売主さまへ、業界の内側からもう1つお伝えします。

実は、「案内すらできなければ売主さまが怒るのでは」という問題は、簡単に解決できてしまいます。自社で探し始めのお客さまがいれば、「予算オーバーの物件ですけど、今後のために中古物件がどんなものか見て勉強しておきませんか?」と誘えば「是非お願いします!」となるからです。ダミーの案内はいくらでも作れるわけです。

この手口は、ゆめ部長が勤務していた大手でも行われていました。「お客さまがいます」という言葉と、実際の案内があることは、別の話だと覚えておいてください。

この勧誘はルール違反なのか

ここからは、この勧誘がルール上どう扱われるのかを整理します。売主さまが対処法を考えるうえでの土台になる知識です。

レインズ利用規定第14条に違反する

まず、根拠になるルールはレインズ利用規定です。第14条(情報の利用)には「元付業者の承諾を得ることなく、売却等依頼者への連絡・交渉をしてはならない」と記載されています。売主さまの窓口になっている不動産会社(元付業者)の承諾なしに、レインズ情報をもとに売主さまへ直接接触することは、この規定に違反します。

罰則も定められています。東日本レインズの処分規定では、承諾を得ずに売主さまへ連絡・交渉した場合は「注意」または「戒告」、売買契約まで成立させた場合は「6か月以上のレインズ利用停止」の処分を受けるとされています。

東日本レインズも注意喚起している

「レインズを見ていなければセーフでは?」という疑問が出てくると思います。実際、勧誘してくる会社は、記事の前半で触れた「情報源の逃げ道」を持っています。SUUMOや自社Webサイトで物件を知ったと言い張れば、レインズ情報の悪用とは断定しづらいからです。

ただし、東日本レインズはこの点についても文書で注意喚起をしています(2024年9月30日付のお知らせ)。要約すると、① 登録物件の売主さまへ直接営業資料を郵送してくる会員についての相談・苦情が増えていること、② レインズ情報をもとにしていない営業活動であっても横取り営業と誤解されてトラブルに発展することがあるため、DM送付などの営業活動を行う際はレインズ登録の有無を確認し、登録されている物件の売主さまへの連絡・交渉は行わないよう努めること、③ 承諾なく連絡・交渉した事実がDMの内容やレインズの稼働履歴等から確認できた場合には指導や処分の対象となることがある、という内容です。

売却等依頼者への連絡・交渉に関する東日本レインズの注意文書
出典:東日本レインズ「REINS INFORMATION」(2024年9月30日)

注目してほしいのは、「レインズ情報をもとにしていない営業活動であっても」という部分です。「レインズは見ていない」という言い訳まで見越して、DMを送る前にレインズ登録を確認しなさいと、レインズ側が先回りして釘を刺しているわけです。売却中の売主さまへのDM・訪問は、業界のルール上グレーどころか、はっきり問題視されている行為だと理解してください。

宅建業法違反ではない

一方で、注意しておきたい点があります。この行為は、原則として宅建業法違反ではありません。

宅建業法は、不動産会社からお客さまを守るための法律です。不動産会社同士のトラブルには適用されません。「宅建業法違反だ!」と主張する不動産会社を見かけますけど、これは勘違いです。

ただし、例外があります。売主さまへの勧誘の「しつこさ」によっては宅建業法違反になるのです。ここは対処法に直結する重要なポイントなので、次の次の章で詳しく説明します。

勧誘に乗った売主さまが負う2つのリスク

「ルール違反は勧誘した会社の問題でしょ?」と思うかもしれません。ところが、勧誘に乗った場合、売主さま自身にも金銭的なリスクが発生します。専任媒介契約書・専属専任媒介契約書には、次の2つの条文があるからです。

リスク1:違約金の請求

専任媒介契約・専属専任媒介契約は、複数の不動産会社へ重ねて売却を依頼できない契約です。それにもかかわらず、売主さまが他の不動産会社にも依頼して売買契約を成立させた場合、元の不動産会社は「約定報酬額に相当する金額」を違約金として請求できると定められています。約定報酬額とは、成約していたら支払うはずだった仲介手数料に相当する金額です。

つまり、勧誘してきた会社へ仲介手数料を支払ったうえで、元の会社からも仲介手数料相当額を請求される可能性があります。手数料の二重払いになりかねない、大きなリスクです。

なお、この違約金が現実になるのは、専任媒介契約・専属専任媒介契約を解除しないまま、他社経由で成約させたケースです。媒介契約は期間の途中でも解除できますし、解除を申し出ただけで違約金が発生するわけでもありません。つまり、勧誘に乗るとしても、正しい手順は「元の契約をきちんと終了させてから」です。この手順を飛ばした売主さまだけが、違約金のリスクを背負うことになります。

▶︎違約金の仕組みと媒介契約の解除については『媒介契約を解除したい|違約金の正体と引き止めの断り方』で詳しく解説しています。

リスク2:費用償還の請求

もう1つが費用償還の請求です。不動産会社に落ち度がないにもかかわらず、売主さまが媒介契約の期限前に一方的に契約を解除した場合、媒介契約の履行のために使った費用(広告費・調査費など)の償還を請求できると定められています。

違約金と比べると金額は小さくなりやすいものの、こちらは「解除しただけ」でも請求され得る点が特徴です。真面目に販売活動をしてくれている不動産会社との契約を、勧誘に乗って解除することには、こうした代償が伴います。

整理すると、勧誘に乗った売主さまを待っているのは「新しい会社への仲介手数料+元の会社からの違約金または費用償還」です。メリットよりデメリットの方が大きくなる可能性が高い、と覚えておいてください。

知らない不動産会社の勧誘への対処法

それでは、実際にDM・手紙・訪問があったとき、売主さまはどうすればいいのでしょうか。段階別に3つの対処法をお伝えします。

基本は相手にしない・放置でOK

1度きりのDM・手紙・訪問であれば、相手にせず放置で問題ありません。返事をする義務はありませんし、連絡してしまうと相手に「見込みあり」と判断されて勧誘が続く原因になります。

ゆめ部長も、実例1の訪問は放置しました。訪問は1度だけでしたし、売主さまも呆れるだけで怒ってはいなかったからです。ケンカをしてもいいことはありません。気にせず、信頼している不動産会社と一緒に売却活動へ集中するのが1番です。

しつこい場合は都庁・県庁の不動産業課へ相談

何度も接触してくる・夜間に訪問してくるなど、しつこい勧誘に発展した場合は、行政へ相談できます。東京都なら都庁の不動産業課です。ゆめ部長が都庁へ直接質問して確認した、重要な線引きを紹介します。

  1. 手紙を1回送るだけなら、宅建業法違反ではない
  2. 売主さまが迷惑だと感じて都庁へ相談すると、都庁から不動産会社へ電話で注意してくれる(注意した履歴が残る)
  3. それにもかかわらず再勧誘したら、宅建業法違反になる

ポイントは2段階目です。「迷惑です」という売主さまの意思表示と、行政の注意履歴がセットになることで、その後の再勧誘が宅建業法違反に変わります。しつこい勧誘に悩んでいる売主さまは、我慢せずに相談してみてください。相談するだけで状況が変わる可能性があります。

東日本レインズへの通報という選択肢

もう1つの窓口が、レインズ側への通報です。こちらもゆめ部長が東日本レインズへ電話で確認しました。

売主さまが「迷惑を被り困っているため対応策を講じてほしい」という意向であれば、経緯の報告書と、届いたDM・手紙などの証拠品を提供して事実確認をしてもらえます。その後は、相手の会社が加盟している業界団体とレインズが協力して調査し、規定に抵触していれば罰則の適用を検討する流れとのことでした。罰則の内容は先ほど紹介したとおり、注意・戒告、売買契約まで成立させたケースでは6か月以上のレインズ利用停止です。

届いた手紙・DM・名刺・パンフレット・封筒は、捨てずに保管しておくことをオススメします。通報する・しないにかかわらず、証拠が手元にあるだけで売主さまの立場は強くなります。

まとめ|甘い勧誘の正体を知れば怖くない

この記事のポイント:
  • 勧誘の正体はレインズ情報を悪用した抜き行為
  • 勧誘に乗ると違約金・費用償還のリスクがある
  • 基本は放置・しつこければ都庁やレインズへ相談
  • 届いた手紙・DMは捨てずに証拠として保管する

売却中に届く知らない不動産会社からのDM・手紙・訪問について、仕組みと実例、リスクと対処法をお伝えしました。

「お客さまがいます」という甘い言葉の正体は、媒介契約の横取りを狙った勧誘であることがほとんどです。乗ってしまえば、違約金や費用償還を請求されるリスクを売主さまが背負うことになります。基本は相手にせず放置、しつこければ都庁・県庁やレインズへ相談。これだけ覚えておけば大丈夫です。

変な勧誘があってもイライラせず、ニコニコしながら良い縁と巡り合えるのを待ちましょう!最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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