内覧後・申込後・契約直前でも不動産会社は変更できる?|仲介手数料を請求される境界線

内覧後・申込後・契約直前でも不動産会社は変更できる?

マイホーム探しで不動産会社にお世話になっているけど、担当の営業マンが「怖い…」「感じ悪い…」「信用できない…」。この人には安心して任せられない!と感じることがあると思います。

「他の不動産会社にお願いしたいんだけど…ダメなの?」と悩む買主さまはたくさんいます。そして、変更を切り出したときに元の会社から返ってくるのが「今までの経費を請求するぞ!」「損害賠償だ!」という脅し文句です。

内覧後・申込後・契約直前のどの段階なら不動産会社を変更できるのか、実際の判例をもとに「違約金・費用請求される境界線」を解説します。結論を先に言えば変更は自由ですが、「契約書にサインしていないから大丈夫」という単純な話ではないことを知っておいてください。

▼この記事でわかること(結論)
  • 不動産会社の変更は買主さまの自由
  • 契約書がなくても仲介手数料を請求されることがある
  • 分かれ目は報酬額まで合意していたかどうか
  • 変更するなら金額の話が固まる前に早めに伝える

不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は財閥系大手仲介会社から中小の不動産会社まで複数の会社で経験を積み、現在は売却専門の「真っ直ぐ不動産」を運営しています。大手・中小の両方を知るからこそ語れる「不動産会社を変更できる境界線」をお伝えします。

※本記事は2026年7月の最新情報に対応しています。

結論:不動産会社は変更できる。ただし契約書がなくても仲介手数料を請求されることがある

最初に結論からお伝えします。どこの不動産会社に購入サポートを依頼するかは、消費者である買主さまの自由です。大手の安心感、地元密着の情報力、仲介手数料の割引など、各社が強みをアピールして競争しているのは、自社を選んでもらうためですよね。いろんなサービスを比較して、自分に合う会社を選ぶ権利は買主さまにあります。

マイホーム購入は打ち合わせが中長期になりますから、やり取りを重ねる中で「この担当者は信用できない…」「相性が悪いな…」と感じることは当然あります。しばらくお世話になったからという理由だけで変更できないなんて、おかしな話です。

ただし、この記事で1つだけ知っておいてほしいことがあります。それは、媒介契約書に署名していなくても、話の進み具合によっては、あとから仲介手数料を請求され、裁判で支払いが認められることがあるという事実です。「契約書にサインしていないから大丈夫」という単純な話ではないんですね。どこに境界線があるのか、実際の判例と行政処分の事例をもとに解説していきます。

問題のはじまりは、仲介手数料の説明と媒介契約が遅すぎる実務

そもそも、なぜ買主さまと不動産会社がこんなトラブルになるのでしょうか。ゆめ部長は、不動産業界の実務に原因があると考えています。

仲介手数料の「成約価格×3%+6万円(税抜)」は、宅建業法が定めた「上限」です。媒介契約書の約款にも、報酬額は限度額の範囲内で不動産会社とお客さまが協議のうえ定めると書かれています。つまり、本来は最初に金額を話し合って決めるのがルールです。ところが実際の取引では、購入申込の直前に資金計算書で初めて手数料額が提示され、売買契約の当日に媒介契約書へ署名捺印する流れがあたり前になってきました。

これ、だまし討ちみたいですよね。

しかも、上限の手数料を請求するなら、それに見合うサービス内容を示すべきなのに、どんなサポートをするのか、取引の流れはどうなっているのかをWebサイトなどで明確にしている会社は少ないのが現実です。根拠を示されなければ、買主さまは「この会社に3%を払う価値があるのか」を判断できません。

手数料の存在と金額を申込前に知らされれば、もっと有利な条件の会社がないか探すのは当然のことですし、仲介会社同士がサービスで競争するのは、自由競争の社会で批判されるべきことではありません。説明を後回しにする実務が、買主さまの「比較する権利」と衝突してトラブルを生んでいるわけです。

「抜き行為」は法律用語ではない|争点は媒介契約と報酬の合意

不動産会社を途中で変更すると、元の会社から「抜き行為だ!」と言われることがあります。ですが、この「抜き行為」は法令用語ではなく、不動産会社同士がお客さまを「奪った・奪われた」ともめるときに使う業界の言葉です。会社が買主さまに向かって言うのは「抜き行為」ではなく、「損害賠償を請求するぞ!」「今までの経費を払え!」という請求の脅しですから、正しい知識で自己防衛しましょう。

ちなみに、「抜き行為」には売却側のバージョンもあります。売主さまの世界でなぜこの問題がなくならないのか、レインズと都庁へ取材した結果はこちらの記事で解説しています。

▶︎『不動産売却の「抜き行為」はなぜなくならない?|レインズと都庁に聞いてわかった「処分できない」構造』

ゆめ部長が不動産会社の免許権者である都庁へヒアリングしたところ、「買主さまが媒介契約を結んでいないなら『抜き行為』の問題にはなりません。初めて会った時に媒介契約を結ぶのがベスト。少なくとも購入申込を受ける時点では媒介契約をもらうべきです」という回答でした。購入サポートを正式に依頼されたと主張したいのであれば、不動産会社側が早い段階で報酬などの条件を明確にして、媒介契約書を交付するべきだ、ということです。

実際、東京都は令和7年6月に、買主さまと媒介契約を締結したのに媒介契約書を交付しなかった不動産会社を、宅建業法34条の2第1項違反で業務全部停止7日間の処分にしています。媒介契約を締結しながら書面を交付しないことは、行政処分の対象になる違反なんです。

ここで注意してほしいのは、「媒介契約がない」と「媒介契約書がない」は別の話だということです。媒介契約は、書面がなくても口頭やお互いの行動から成立したと判断されることがあります(法律用語で「諾成契約」といいます)。つまり、契約書にサインしていなくても、裁判所が「媒介契約は成立していた」と認めれば、仲介手数料の支払い義務が生じる可能性があるわけです。都庁の話は宅建業法(行政処分)の世界の整理であって、お金を払うかどうかの民事の世界は、別のルールで動きます。

契約書がなくても仲介手数料を請求された判例がある

それでは、実際の裁判例を見てみましょう。どちらも媒介契約書なしで契約直前に不動産会社を外したケースなのに、結論が正反対に分かれた2つの判決です。

請求が認められた例(東京地裁 令和3年2月26日判決)

買主さまは、不動産会社の紹介でマンションの購入を検討し、「成約本体価格の3%+6万円の仲介手数料を申し受けます」と記載された購入申込書に署名捺印しました。さらに、買主さまのほうから手数料を1,080万円へ減額してほしいと依頼し、契約日の案内文書(手数料の半金540万円の記載あり)を受け取っても異議を述べませんでした。売買契約書の案文が完成した契約直前になって「家族の反対」を理由に購入を取りやめ、後日、別の会社の媒介でこっそり同じ物件を購入していたことが発覚します。

裁判所は、媒介契約書がなくても報酬額1,080万円の合意は成立していたと認め、購入意思がなくなったように装って会社を排除した行為は自由競争の範囲を逸脱していると判断し、仲介手数料1,080万円の請求を全額認めました。買主さまは控訴しましたが棄却され、この判決は確定しています。

請求が認められなかった例(東京地裁 令和3年12月24日判決)

こちらの買主さまは、折込広告を見て問い合わせ、複数回の内覧を経て購入申込書を提出しました。不動産会社は住宅ローン事前審査の代行、リフォーム業者との調整、売主さまへの価格交渉、売買契約書案の作成まで進めていましたが、買主さまは契約直前に購入の撤回を伝え、別の会社に乗り換えたものの、最終的には売主さまと直接契約してしまいます。

会社は「ここまでやったのだから黙示の媒介契約が成立していた」と主張しましたが、裁判所は、報酬額の合意が成立したとは認められず、媒介契約の有効期間や違約金についても説明していないとして、媒介契約の成立を否定し、請求を棄却しました。控訴審でも結論は変わっていません。

分かれ目は「報酬額まで合意していたか」

2つの判決を比べるとわかるとおり、分かれ目はサポートの深さではありません。どちらも会社はかなり深く関与していました。違いは、仲介手数料の金額について合意があったと言えるかどうかです。認められた例では、①手数料額が書かれた申込書に署名捺印した、②買主さまが自分から減額を依頼した、③金額の書かれた案内文書に異議を述べなかった、という事実が積み重なっていました。特に②の「自分から金額交渉をした」という事実は、金額を認識して取引の前提にしていた証拠として強く働きます。

ほかにも、物件紹介・内覧の案内・買受申出書の取得まで関与した会社の請求が「営業活動の範囲内にとどまる」として棄却された判決(東京地裁 令和3年3月30日)があります。この判決を解説した一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)は、不動産会社が報酬を請求するためには、報酬条件を事前に合意し、媒介契約書で明確化して交付しておくことが「不可欠」だとまとめています。

どこまでサポートを受けたら危険ゾーンになるのか

それでは、不動産会社の変更はどの段階までなら問題ないのでしょうか。まず、6つの箇条書きを見てください。下に進むにつれて不動産会社のサポートが増えていきます。

  • 物件紹介を受けた
  • 現地を車で案内してもらった
  • 建物プレゼンを受けた
  • 住宅ローンの審査を通してもらった
  • 価格交渉を通してもらった
  • 契約書類が完成していて明日契約予定

先ほどの2つの判例を踏まえると、法的な危険ゾーンの目安は「下に進むほど危険」ではなく、「仲介手数料の金額に合意したと判断される事実が積み重なっているほど危険」です。手数料額が書かれた申込書に署名した、自分から金額の交渉をした、金額入りの見積書を受け取って何も言わなかった…こうした事実は、1つ1つが「金額に納得して取引を進めていた証拠」として扱われます。サポートをどれだけ受けたかではなく、金額の合意があったと言える状態かどうかで判断されるわけです。

そして、法律とは別に、人としての問題もあります。仲介手数料は成功報酬ですから、不動産会社にとっては「0か100か」です。何の落ち度もなく丁寧に対応してくれた会社を自己都合で便利に利用しただけなら、たった1回の現地案内でも不義理でしょう。準備・移動・やり取りで最低3時間はかかりますし、その時間で大切なお客さまへ対応できたかもしれないと思うと、ゆめ部長は悲しい気持ちになります。

最悪なのは、契約前日の夜に「仲介手数料を半額にしてください。そうしないと契約しません」と迫るようなやり方です。売主さまを含めた関係者全員の段取りが終わった状態を人質に取る、不誠実な交渉ですよね。もっとも、値下げを要求しただけで、直ちに仲介手数料や損害賠償の支払い義務が生じるわけではありません。

先ほどの認容例では、手数料の金額まで合意して売買契約日も決まっていたのに、買主さまが購入を取りやめたように装って元の会社を外し、別会社の媒介で同じ物件を購入しました。裁判所は、この一連の行為を故意に売買契約の成立を妨げたものと判断し、民法130条(条件成就の妨害)により仲介手数料の請求を認めています。

また、契約を締結すると信頼させて相手方に特別な準備や費用負担をさせたうえで、正当な理由なく不誠実に交渉を破棄したような事情があれば、「契約締結上の過失」の法理による損害賠償が問題になる可能性もあります。ただし、契約直前に変更したというだけで、当然に損害賠償義務が生じるわけではありません。単なる値下げ交渉と、報酬の発生を故意に妨害する行為は分けて考える必要があります。

一方で、仲介手数料がかかることを直前まで伝えなかった、説明に不備があったなど、不動産会社側への信頼が崩れたのであれば、どの段階でも変更は仕方がないとゆめ部長は考えています。ただし、契約直前には売主さま・金融機関・司法書士など複数の関係者がいますから、直前での変更は控えて、できるだけ早い段階で誠実に伝えるようにしましょう。

専任媒介・一般媒介を結んでいた場合の違約金と費用請求

ここまでは媒介契約書に署名していないケースの話でした。すでに媒介契約を結んでいる場合は、契約書に基づいたルールが適用されます。

専任媒介契約(専属専任媒介契約)を結んでいたら

専任媒介契約を結んでいながら、他の不動産会社と媒介契約を結んで売買契約を行った場合、「約定報酬額に相当する金額の違約金の支払いを請求できる」と定められています。専任媒介契約に署名してから購入申込をしたのに、あとから手数料の安い会社に乗り換えて契約した…というケースでは、この請求は妥当なものとして認められてしまいます。満額になるか減額されるかは、弁護士先生に入ってもらう案件になるでしょう。

一般媒介契約を結んでいたら

一般媒介契約は、そもそも複数の不動産会社に重ねて依頼できる契約です。ですから、他の会社の媒介で購入すること自体は契約違反ではありません。他社に取られたくないなら専任媒介契約をお願いすればいいわけで、それをしなかったのは会社側の選択です。

なお、一般媒介契約は通常「明示型」なので、他の会社にも依頼したことを報告する義務はあります。この報告を怠ると「費用償還請求」をされる可能性はありますが、請求する会社側が交通費・物件調査費用・広告費などの明細書を作成し、領収証で金額を立証しなければならず、人件費は請求しないのが望ましいとされています(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」)。実際に問題になることはほとんどないでしょう。

まとめ:変更は自由。ただし早めに、誠実に伝える

最後に、この記事の結論をまとめます。マイホーム購入をサポートしてもらう不動産会社を、途中で別の会社に変更するのは買主さまの自由です。ただし、「媒介契約書にサインしていないから絶対に請求されない」わけではなく、仲介手数料の金額に合意したと判断される事実が残っている場合は、あとから仲介手数料を請求されるリスクがあります。変更したいと思ったら、金額の話が固まる前に、早めに、誠実に伝えましょう。

この記事のポイント:
  • 不動産会社の変更は買主さまの自由
  • 報酬額の合意があれば契約書なしでも請求される
  • 変更は金額の話が固まる前に誠実に伝える

そして、ゆめ部長は業界側にも言いたいことがあります。買主さまとの「抜き行為」トラブルを防ぎたいなら、不動産会社は物件案内の前に、サービス内容と仲介手数料を説明して媒介契約書を交付するべきです。契約当日に初めて署名をもらう実務を続けながら、お客さまの行動だけを「抜き行為だ」と責めるのは矛盾しています。

裁判所は、媒介契約書がなくても報酬額の合意があれば請求を認めることがあります。一方で、不動産適正取引推進機構(RETIO)は、トラブルを防ぐためには報酬条件を事前に合意し、媒介契約書で明確化して交付しておくことが「不可欠」だとまとめています。だからこそ、実務を変えるべきなのは不動産会社側です。あわせて、どこからが違反なのかのルールを明確にしてこなかった行政にも、大きな責任があるとゆめ部長は考えています。

なお、いま不動産を売却中の方は、知らない不動産会社からDM・手紙・訪問で勧誘される「売却側の抜き行為」に注意してください。勧誘に乗ると違約金を請求されるリスクがあります。詳しくはこちらの記事をどうぞ。

▶︎『売却中に知らない不動産会社がDM・手紙投函・訪問|勧誘に乗ると違約金のリスク』

トラブルなく、気持ちの良いお取引を実現したいものですね。困った場合は、不動産会社の免許権者に相談してみてください。味方になってくれますよ!東京都知事免許の不動産会社なら、相談先は都庁の不動産業課です。他の道府県の知事免許の会社なら、各道府県の宅建業担当課が窓口になります。

担当部署:東京都住宅政策本部 民間住宅部 不動産業課(指導相談担当)
直通電話:03-5320-5071
電話相談:都庁開庁日 9:00~17:30
面談相談:要予約(電話で事前予約)/新宿区西新宿2-8-1 都庁第2本庁舎3階北側 不動産業課内/都庁開庁日 10:00~12:00、13:00~16:00

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