不動産売却で「現金だから値引きして」に応じるべき?|売主が知るべき判断基準
「現金一括で購入するから、大幅に値引きしてよ。」売却活動中に、こんな購入申込を受けることがあります。
現金購入と言われれば、「確実に決済できそうだし、多少の値引きは仕方ないのかなぁ」と迷う売主さまも多いのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。
結論を先に言えば、「現金一括」は、それだけでは大幅値引きに応じる理由になりません!
なぜ応じる必要がないのか。そして、例外的に「応じる判断もアリ」なのはどんなときか。売主さまが持っておくべき判断基準を解説します。
- 現金一括は、それだけでは大幅値引きに応じる理由にならない
- ローン白紙解除の回避も決済スピードも、大きなメリットではない
- 売却を急ぐ事情があるなら、値引きに応じるのも選択肢
- ローンが通りづらい物件なら、現金の買主さまは大事なお客さま
- 価格交渉が来る前に応じるラインを担当者と決めて共有しておく
不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は財閥系大手仲介会社から中小の不動産会社まで複数の会社で経験を積み、現在は売却専門の「真っ直ぐ不動産」を運営しています。大手・中小の両方を知るからこそ語れる「現金一括値引きの判断基準」をお伝えします。
現金一括で購入する買主さまは意外と多い
そもそも、数千万円の不動産を現金一括で購入できる人がそんなにいるの?と思いますよね。実は、世の中にはお金持ちがたくさんいるんですよ。
ゆめ部長が仲介したお客さまの中にも、現金購入した人はたくさんいました。
■ 両親からの結婚祝いで買ってもらった人
■ 遺産を相続した人
■ ネットビジネスで大成功して億単位の資産がある人
■ 不動産の買い替えで資産を築いた人
■ ストックオプションで数億円を得た人
最近では、投資や副業で資産を作った買主さまも増えています。売却活動をしていれば、「現金一括で買います」という購入申込は思うほど珍しくありません。だからこそ、値引き要求にどう向き合うかの判断基準を、あらかじめ持っておくことが大事なんです。
現金一括は「大幅値引きに応じる理由」にならない
現金購入する買主さまからよく出てくるのが、「現金で買うんだから、思い切って値引きしてよ!」という交渉です。
でも、冷静に考えてみてください。現金一括で支払われても、住宅ローンで支払われても、売主さまが受け取る売却代金は同じです。それなら、「少しでも高く買ってくれる買主さま」を選びたいのが売主さまの本音ですよね。
とはいえ、「現金購入なら売主にもメリットがあるはずだ」というのが買主さま側の言い分です。この言い分が、大幅値引きと釣り合うほどのものなのか、1つずつ検証してみましょう。
言い分①|ローン審査に落ちて白紙解除になる心配がない
住宅ローンを利用する場合、審査が通らなければ契約は白紙解除になるため、売主さまのリスクはゼロではありません。ただ、このリスクは対策できます。審査基準が信頼できる銀行で事前審査を通しておくこと、そして、複数の銀行で事前審査を通しておくことです。経験豊富な仲介会社がここまでサポートしていれば、住宅ローン特約による解除はほとんど起こりません。大きなデメリットとは言えないんです。
言い分②|現金だからすぐに支払える
たしかに、現金購入のほうが決済は早いです。ただ、住宅ローンの手続きを急げば、その差は2〜3週間ほど。大幅な値引きと引き換えにするほどのメリットではありませんよね。
それに、「すぐに決済できること」が、売主さまにとって必ずしもメリットになるとは限りません。売主さま側にも、抵当権抹消(住宅ローンを一括返済する手続き)の準備や引越しなど、決済までにやるべきことがあるからです。
決済までの期間が短すぎると、こうした準備が間に合わない可能性もあります。
つまり、現金一括払いは、「大幅な値引きに応じること」と釣り合うほどのメリットではない可能性が高い、ということです。冷静に判断しましょう。
値引きに応じる判断もあるケース
一方で、現金一括の強みが売主さまにとって大きな価値になるケースが2つあります。「売却を急ぐ事情があるとき」と「住宅ローンが通りづらい物件のとき」です。
売却を急ぐ事情があるとき
現金一括の「即決済できる」という強みが、売主さまにとって大きな価値になるのは、たとえば、次のような事情があるときです。
- 買い替えローンの期限が迫っていて、売却を急いでいる
- 離婚にともない、早く手続きを終わらせたい
- 急ぎの資金が必要になった
こうした事情があるなら、高値売却よりも早期売却を優先して、許容範囲の値引きに応じるのもよい選択肢です。
ただし、1つ注意点があります。売却を急ぐ事情は、買主さま側に知られると足元を見られる、ということです。買主さま側の仲介会社は、「売主さまに急ぐ事情はないか」を探りながら交渉してきます。ゆめ部長が購入をサポートする立場なら、急ぐ事情をキャッチできたら、現金購入という武器を使い、できる限りの価格交渉を通せるように頑張ります。それが買主さま側の仲介会社の仕事だからです。
だからこそ、売却を急ぐ事情は、買主さま側に悟らせないでください。そのうえで、「どこまでの値引きなら応じるのか?」そのラインを、担当者とあらかじめ決めておきましょう。事情を隠しながら交渉の準備もできていれば、足元を見られて必要以上の値引きに応じてしまう失敗を防げます。
住宅ローンが通りづらい物件のとき
もう1つは、物件の条件によって、買主さまが住宅ローンを使いにくいケースです。たとえば、次のような物件です。
- 再建築不可の物件
- 違法建築(容積率・建ぺい率オーバー)の物件
- 旧耐震基準の物件
- 借地権の物件
- 越境がある物件
- 私道の持分がない物件
- 自主管理のマンション
こうした物件は、金融機関の担保評価が低くなりやすく、住宅ローンの審査が厳しくなったり、そもそも通らなかったりします。だからこそ、現金で購入できる買主さまは、とても大事なお客さまになるんです。
とはいえ、住宅ローンが通りづらいことを見越した値付けで売り出しているなら、弱気になりすぎてはいけません。下記の「ゆめ部長の売却語録」にも掲げているとおり、12番『高値で粘り勝ちも、立派な戦略』、3番『不動産売却はたった1組を見つける戦い』。粘り強く待って、物件を気に入ってくれるたった1組と出会えれば、それでいいんです。

現金購入でも資金の裏付けを確認する
住宅ローンの買主さまは、金融機関の審査で資力を確認されます。一方、現金購入の買主さまには、その審査がありません。つまり、「本当に支払えるのか」を誰も確認していない場合があるんです。
実際に、契約したのに資金を用意できず、決済に至らないトラブルもあります。特に、海外にある資産は、送金規制などによって動かせないこともあるそうです。
現金購入の申込を受けたら、預金残高を確認できる資料の提示をお願いするなど、資金の裏付けを確認するよう担当者に依頼してください。決済されなければ、大切な売却期間を失うことになりますからね。
【体験談】「ビジネスの世界では現金一括ならあたり前だ!」と迫られた話
最後に、ゆめ部長の体験談を1つ。
購入のサポートをしていたお客さまから、「現金で購入すれば大幅に値下げできるものなんだ!なんで最初から諦めているんだ!」と怒られたことがあります。
この記事に書いた内容を説明したところ、「ビジネスの世界では現金一括なら金額を下げるのがあたり前だぞ!実際オレは仕事で現金払いを強みにして、すごい金額を下げさせたことがあるんだ!」と熱弁を振るわれてしまいました…。
たしかに、BtoB(企業間の取引)の世界ではそうなのかもしれません。でも、個人の売主さまとの取引に、その論理は通用しません。強い交渉を通せたのは、所属している会社の看板があってこそ。個人でそんな傲慢な交渉は難しいものです。
売主さまへの学びはシンプルです。根拠のない大幅値引き要求に、応じる義務はまったくありません。「現金だから」という言葉に押されて、大切な資産を安売りする必要はないんです。買主さまを選ぶのは、売主さまなのですから。
まとめ|「現金だから」は値引きの理由にならない
- 現金一括であること自体は、値引きの理由にならない
- 急ぐ事情・ローンが通りづらい物件なら、応じる判断もアリ
- 応じるラインは事前に決めて、担当者に伝えておく
- 根拠のない大幅値引き要求に、応じる義務はない
現金一括での購入は、売主さまにとって「大幅値引きに応じるほどのメリット」にはなりません。妥当な範囲の価格交渉であれば、買主さまとの良縁を大事にしながら、担当者と相談して落とし所を決めていきましょう。無理な要求には、断る勇気を持ってくださいね。
あとは、価格交渉の場面で100%売主さまの味方になってくれる不動産会社を選ぶこともお忘れなく。交渉に強いパートナー選びもすごく大事です!
▶︎ 相性の良い不動産会社の探し方は「不動産売却はどこがいい?不動産会社の選び方5つの基準|大手と中小も比較」で詳しく解説しています。
ぴったりの売却プランを知りたい売主さまは「【かんたん診断】ぴったりの売却プランはどれ?|真っ直ぐ不動産の3つのプランを比較」へ。
皆さまからのお問い合わせを心よりお待ちしています。
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