不動産売却の「1番手」「2番手」とは?優先順位の決め方と注意点|買主を選ぶのは売主

不動産売却の「1番手」「2番手」とは?|優先順位の決め方と注意点

売却中の不動産に、複数の購入申込が同時に入ってくることがあります。本当にうれしいお話ですけど、どちらのお客さまに売るか…ちゃんと決めなければならず、悩ましい問題になるでしょう。そこで、「1番手」「2番手」の決め方と、2番手を優先するときの注意点を整理します!

▼この記事でわかること(結論)
  • 誰と契約するかは売主さまが選べます
  • 1番手=交渉する権利の順番です
  • 金額だけで選ぶと契約が流れるリスクあり
  • 繰り上げ前に1番手へ買い上げ確認を

不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は財閥系大手仲介会社から中小の不動産会社まで複数の会社で経験を積み、現在は売却専門の「真っ直ぐ不動産」を運営しています。大手・中小の両方を知るからこそ語れる「買主さまの選び方」をお伝えします。

※本記事は2026年7月の最新情報に対応しています。

不動産購入申込が2件同時に入ったら…どうする?

早速ですけど、イメージしてください。

自分が中古マンションを5,000万円で販売している状況です。この物件に、なんと!購入申込が同時に2件入ってきました。それぞれのお客さまの条件は次の通りです。

① 先のお客さま…

2組目に内覧したファミリーでした。とても気に入ってくれて、内覧したその日の内に4,900万円で申込してくれました。とても良い人たちですが、100万円の価格交渉があり、住宅ローン審査はこれからになります。

② 後のお客さま…

1組目に内覧したファミリーで、奥さんとお子さんだけで先に内覧していました。申込が入ったことを知り、すぐに旦那さんも内覧して、満額の5,000万円で現金購入するから1番手にしてほしいと言っています。

さぁ、売主さまならどちらを選びますか?

難しい問題ですねぇ~

  • どのように決めればいいのか?
  • 注意点は何か?

一緒に考えていきましょう。

誰と契約するかを決めるのは売主さまです

まずは、いちばん大事な結論からお伝えします。

複数の購入申込が入ったとき、誰と契約するかを決めるのは売主さまです。

「先に申込をした人と契約しなければならない」という法律のルールはありませんし、購入申込書に法的な拘束力もありません。申込の順番で自動的に決まるわけではなく、それぞれの買主さまの条件を見比べて、売主さまが選んでいいのです。

これは、ゆめ部長の意見ではありません。不動産会社間のルールである「レインズ利用ガイドライン」でも、同時に複数の購入申込があった場合は、依頼者(売主さま)が選択できると定められています。

「金額で選んでもいいのでしょうか?」という質問をよくもらいますけど、答えは「OK」です。大抵の売主さまは金額で選ぶことになりますから、金額重視でかまいません。ただし、金額「だけ」で選ぶと後悔することがあります。住宅ローンの審査が厳しそう・手付金が少ない・要望が多くてワガママ…という買主さまを選んでしまうと、申込キャンセルや契約解除のリスクが高くなるからです。この点は、後ほど具体例で解説しますね。

なお、口約束や申込書のやり取りだけでは、まだ売買契約は成立していません。売買契約書への署名捺印と手付金の授受があって、はじめて契約成立となるのが不動産取引の実務だからです。

ここで、知っておいてほしい注意点をお伝えしておきます。

「売主さまが買主さまを選ぶ」というルールと、定義が曖昧な「番手」の運用は、両手仲介を狙う営業マンに悪用されることがあります。他社の申込を握り潰しても「売主さまが選んだことにする」「2番手だと伝える」ことで隠せてしまうからです。ルール悪用の手口と見抜き方は不動産売却の囲い込みの見抜き方|業者の手口30選を6パターンで分類の手口㉗で詳しく解説しています。

不動産申込の「1番手」とは…?

次に、「1番手」「2番手」という言葉を整理しておきましょう。

不動産取引の実務では「1番手」について明確な定義づけがされていません。申込書を先に入れたら1番手なのか、住宅ローンの事前審査が通っていないとダメなのか…営業マンや不動産会社によって言うことが変わります。そこで、ゆめ部長が考える「1番手」の定義を書いておきます。

「1番手」の「番手」は交渉する権利の順番だと考えます。交渉する権利は、住宅ローンの事前審査が内定済み、あるいは現金購入であり、不動産購入申込書の提示による意思表示ができていることで発生します。

先ほどの例で考えてみると…

先に申込をしたお客さまは、住宅ローンの事前審査を通していないので、後に申込をした現金購入のお客さまが「1番手」となります。もし、先に申込をしたお客さまの事前審査が内定済みであれば、不動産購入申込書を提示した順番通り、先に申込をしたお客さまが「1番手」、後に申込をしたお客さまを「2番手」とします。

「1番手」が交渉を開始。条件がまとまれば「契約予定」となり、原則として、1番手のお客さまと契約します。

買主さま側から見た「1番手の取り方」や「2番手からの逆転」については、不動産購入申込の「1番手」になるには?|2番手でも買える可能性と逆転の方法で詳しく解説しています。

3組同時の申込で比較してみよう|条件の見方

「条件を見比べて選ぶ」と言われても、何をどう見ればいいのか…イメージしづらいですよね。実際にゆめ部長が売主さまと一緒に検討した事例で、条件の見方を練習してみましょう。

現地販売会を開催したところ、同日に3件の購入申込が入りました。

  • 1組目:満額。ただし、住み替えのため「自宅を売却できること」が条件
  • 2組目:現金購入。ただし、200万円の価格交渉あり
  • 3組目:80万円の価格交渉あり。夫婦公務員で住宅ローンの心配がなく、人柄も良い

1組ずつ見てみます。

1組目:

満額なのはうれしいけれど「自宅を売却できなければ購入をやめられる」という買い替え特約がネックです。裏を返せば、この特約を外してもらえるなら、何の問題もない買主さまに変わります。満額の申込は、特約を受け入れてもらうための交換条件かもしれない…という見方もできますね。

2組目:

現金購入をありがたく感じるかもしれませんが、実は、そこまで高く評価しない方が良いでしょう。なぜなら、住宅ローンを利用する買主さまでも、事前審査が内定していれば、売主さまにとってのリスクはほとんど変わらないからです。200万円の価格交渉の方が重たいですよね。

それに、20年の実務で感じてきた正直な話をすると、現金購入の買主さまは「現金なんだから優遇されて当然」という意識になりやすく、厳しい価格交渉・強めの要望・あっさりしたキャンセルが起こりやすい傾向があります。もちろん誠実な方も大勢いますけど、「現金=安心で有利」と思い込むのは危険です。

ただし、最近は、ネット銀行の利用が増えた影響で、事前審査が内定していても本審査で崩れるケースが増えています。「事前審査の内定=絶対安心」ではないことも、あわせて知っておいてくださいね。真っ直ぐ不動産では、買主さまの属性と、事前審査を通した銀行の傾向を踏まえて、本審査まで安心できる申込かどうかをアドバイスしています。

3組目:

80万円の価格交渉はあるものの、住宅ローンの心配がなく、人柄も良い。事前審査を通してもらえれば、満額にならなくても、この買主さまと契約するのが一番安全そうです。

結果、ゆめ部長は3組目の買主さまを推薦。売主さまにも同意してもらえました。

もう1つ、「現金・満額」に飛びつかない方が良いとアドバイスした事例も紹介しておきましょう。

売却活動を開始して最初の日曜日に2件の申込が入りました。1組目は同じマンション内の賃貸にお住まいのお客さまで、少しの価格交渉あり・事前審査は週明けスタート。2組目は海外在住で、内覧をせずに写真と動画だけで決断した「ノールック買付」。満額・現金購入だけど、3週間後に契約と引渡しを同日に行いたいという希望でした。

金額だけ見れば2組目ですけど、内覧なし・海外在住・契約と引渡しが同日…と、キャンセルや取引トラブルのリスクがかなり高い条件です。この事例では「1組目に満額へ買い上がってもらうのがベスト。2組目と進めるなら、販売活動を止めず、1番手ありで他のお客さまも探し続けてリスクに備えるべきです。」とアドバイスしました。

現金・満額という言葉のインパクトに引っ張られず、契約が本当に成立するか?そこまで見て判断してくださいね。

2番手が入ったとき、1番手にどう対応する?

1番手と2番手の購入申込をもらえた時、どちらを優先するべきかについては、下記2点を踏まえて売主さまへアドバイスしています。

  • 交渉がどの段階まで進んでいるのか?
  • それぞれのお客さまが希望する契約条件はどうか?

2つに分けて考えてみましょう。

【1】価格交渉を承諾して契約日が決まっている場合

価格交渉を承諾して契約日まで決まっていれば、既に「契約予定」になっている状態です。この場合は、1番手の申込を優先させるべきです。

交渉が通り、契約日をセッティングできた時点で、住宅ローンの審査・契約のための印紙購入・日程調整などの準備を進めています。それにもかかわらず、1度まとまった交渉を一方的に破棄すれば、信頼を裏切ることになってしまいますからね。

それに、これは信頼だけの問題ではありません。「契約成立は確実」と信じさせて買主さまに準備を進めさせた後の一方的な破棄は、特殊なケースでは損害賠償責任を問われた裁判例もあります。契約前なら何をしてもノーリスク、というわけではないのです。

しかし、2番手の申込が満額であり、どうしても高値での成約を目指したい場合もあるでしょう。

この場合は、2番手のお客さまをすぐに繰り上げるのではなく、1番手のお客さまに「2番手の申込が入りました。こちらのお客さまは価格交渉なしです。満額での購入を検討できませんか?」と連絡して、買い上げの機会を提供してください。

1番手のお客さまが「買い上げはNG!」という回答であれば、2番手を繰り上げるのは仕方ありません。1番手のお客さまは納得できないかもしれませんが、これなら誠意をもって対応したと言えるはずです。

ただし、2番手を繰り上げる場合は次のことも考えて総合的に判断しましょう。

  • 住宅ローン:ある・ない
  • 価格交渉:多い・少ない・ない
  • 特約:ある・ない
  • 手付金額:多い・少ない
  • 契約可能日:早い・遅い
  • 引渡可能日:早い・遅い
  • お客さまの人柄:良い・微妙…

少し解説を入れておきます。

自営業者・転職して間もない・営業職で年収の増減が激しい・契約社員・物件価格に対する年収がギリギリなど、住宅ローンの審査が厳しそうなら、確実に契約できそうなお客さまを優先させた方が良いと思います。

また、買主さまが住み替えで、自宅の売却が解約になったら購入の契約も解約する「買い替え特約」を付けて欲しいという要望があった場合も同様です。

このように、どちらのお客さまを優先させるか?については、個別に考えなければいけません。2番手の購入申込も入った場合は、1番手で「契約予定」にしたお客さまが最優先であることを前提にしつつ、ゆめ部長と一緒に検討しましょう。

【2】ほぼ同時に申込が入った場合

ほぼ同時に申込が入ったのであれば、数時間の差は気にせず、条件が有利な方を選択してよいでしょう。

条件が良い方を1番手としたら、2番手になったお客さまには、不動産会社から丁寧に連絡してもらうようにお願いしてください。ちゃんと連絡・報告をしていれば「2番手を確保してほしい」と言ってもらえることもありますからね。

もう1つ、番手の判断は市況によっても変わります。申込が次々と入る売り手市場なら、売主さまは条件を見比べてじっくり選べます。反対に、申込がなかなか入らない買い手市場では、1番手の価値が跳ね上がります。厳しい条件を付けて悩ませるより、価格交渉や引渡日の要望には柔軟に対応して、目の前の1番手を逃さないことを優先しましょう。市況は数年単位で入れ替わるものですから、「今はどちらの市況なのか」を担当者に確認してから判断してくださいね。

2番手を優先したらキャンセルされ、1番手も契約にならない…「不動産あるある」

売却中の不動産に複数の申込が入った場合、2番手を優先すると、1番手は購入意欲を失う!という「不動産あるある」があります。特に、2番手を繰り上げるときに1番手を雑に扱うと、後でしっぺ返しをくらうことが多くなります。

こんな感じです→

価格交渉がまとまって売買契約を日曜日にセット。ところが、木曜日に、現金・満額で購入したいお客さまが現れ、契約予定としていた1番手に即・お断りの連絡をしました。

ところが、土曜日の夜、2番手がキャンセル。
慌てて1番手のお客さまへ電話します。

「良かったですね!」
「契約がキャンセルになりましたよ!」

蔑ろにされた1番手のお客さまは、どう思うでしょうか?

ほとんどのお客さまが「ラッキー」とは思わず、気持ちが冷めきっているものです。それどころか、雑な扱いをされたことへの怒りもあり、営業マンにカウンターパンチを食らわせます。

「この物件はご縁がなかったと思います。」
「ガチャッ!!!」
「ツーツーツー…。」

その後、連絡はつながりません。

不思議なことに、この後、内覧が入ることすらなくなり、仕方なく値段を下げざるを得なくなる。こんなことが、実は、不動産取引ではよくあることなのです。

契約予定になっていたお客さまの立場で考えてみてください。2番手に下げられた後、「1番手に繰り上がりました!」と言われても、面白くないですよね。「もう契約しません!」と言いたくなる気持ち、わかる気がしませんか?だからこそ、2番手を繰り上げるときは、買い上げ機会の提供と、丁寧な連絡・報告が欠かせないのです。不動産はご縁も大事ですからね。

「売主さまの立場」と「買主さまの立場」で言うことは逆転する!

住み替えをサポートしたお客さまの話。売る時と買う時で、1番手・2番手の取扱いに関して主張が変わってしまい驚いたことがあります。

売る時の主張…

「少しでも高い金額で売りたいし、売主のリスクが少ない買主を選びたい!売買契約前であればノーペナルティでキャンセルできるわけだから、こちらの都合で売る相手を決めたっていいはずだ!なんで、1番手をキャンセルして2番手にしたらダメなんだ!?あなたは私たち売主の味方をする気がないのか!」

買う時の主張…

「価格・手付金額・引渡時期などの交渉がまとまって契約準備をしているのに、急にキャンセルして他の人と契約したいなんて、あまりにも不誠実で非常識だ!」

売る立場と買う立場。立場が逆になると、主張も逆になる。まぁ、人間らしいな…と思うところですけどね(苦笑)

お客さまは「自分は大切に扱われて優遇されるはずだ。」と思い込んでいることが多く、相手の立場を考えられなくなるものです。「高額な商品を売買するんだからおもてなしされたい!」と心のどこかで思っているのでしょうね。そこを理解しておくと、知らないうちに1番手を裏切ってしまうリスクを避けられるはずです。

最後に…

この記事のポイント:
  • 誰と契約するかを決めるのは売主さま
  • 1番手=交渉する権利の順番
  • 金額だけで選ぶと契約が流れるリスクあり
  • 2番手繰り上げの前に1番手へ買い上げ確認
  • 1番手への誠意が高値成約を守る

不動産売却は、売り方1つで大きく成果が変わるものです。申込が入った時に、迷わず自信を持って「GO!」を出せるように、信頼できる担当者と事前準備をしっかり進めておくようにしてください。特に、譲ってもOKな条件、絶対に譲りたくない条件については、しっかり話し合うことをオススメします。

売主さまの売却がうまくいきますように!!

本日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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