「住友の囲い込み50%・三井40%」は本当?|7年分の元データで”数字の作られ方”を突き止めた
「大手の不動産会社だって、囲い込みをしているんじゃないか…」
そう疑って検索してきた方へ。最初にお伝えします。その疑いは、間違いではありません。囲い込みは、不動産業界に実在する商慣習です。
ネット上には、「住友の両手取引比率は50.90%、三井のリハウスは38.42%」という会社別の比率表が広く出回っています。出どころは、ダイヤモンド社の不動産メディア「ダイヤモンド不動産研究所」の記事です。
この数字は、売主さまの会社選びにまで入り込んでいます。ゆめ部長は売却相談の場で、売主さまから「住友さんは囲い込みをするんですよね。野村さんはしないと聞きました」と言われたことがあります。理由をお聞きすると、根拠はこの比率表でした。
知り合いの宅建士と話しても、「あの数字、現場の感覚と合わない会社があるよね」という話になります。
ゆめ部長が特に立ち止まったのは、野村不動産ソリューションズの「21.97%」です。両手仲介は、片手仲介より会社の利益が約2.5〜3.5倍に膨らむ取引です。その両手仲介が2割ほどしかないとしたら、少し不思議な数字に思えます。
とはいえ、現場感覚だけで数字に反論しても水掛け論です。
そこで、この比率の元データである住宅新報の「売買仲介実績」を7年分(2019〜2025年度)さかのぼり、数字がどう作られているのかを一つずつ確かめました。
先に結論です。この「両手取引比率」は、両手仲介の件数を数えた数字ではなく、たった1本の計算式から作られた「推計値」です。しかも、その式には両手仲介とは関係のない要因がいくつも混ざっています。
この記事で、その全部をお見せします。
- 「両手取引比率」を作っている計算式(実際に再現します)
- 計算式に混ざる、両手仲介とは別の4つの要因
- 野村の数字が低く出る構造的な理由
- 「囲い込み率」と読んではいけない理由
不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は財閥系大手仲介会社から中小の不動産会社まで複数の会社で経験を積み、現在は売却専門の「真っ直ぐ不動産」を運営しています。大手・中小の両方を知るからこそ語れる「数字に振り回されない売り方」をお伝えします。
※本記事は2026年8月の最新情報に対応しています。
その「両手取引比率」、両手の件数を数えた数字ではありません
まず、今回検証する数字がどこから出てきたのかを確認します。
対象は、ダイヤモンド不動産研究所の記事「大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 住友は50%で三井は約40%!売却時は両手取引比率が高い会社に注意を【2026年最新版】」です(2024年2月13日公開・2026年8月18日更新)。
この記事には、大手・中堅33社の「手数料率」と「両手取引比率」の一覧表が掲載されています。大手4社の数字は次のとおりです。
- 東急リバブル:手数料率4.38%・両手取引比率32.61%
- 三井不動産リアルティグループ(三井のリハウス):4.57%・38.42%
- 住友不動産ステップ(旧住友不動産販売):4.98%・50.90%
- 野村不動産ソリューションズ:4.02%・21.97%
この表の元データは、記事の注記に明記されています。住宅新報の「2024年度通期売買仲介実績」(住宅新報 2025年5月27日号)です。主要な不動産会社へのアンケートをもとに集計されている、業界ではよく知られた調査です。
では、その住宅新報の表には何が載っているのでしょうか。
手数料収入・取扱件数・取扱高の3つだけです。「両手仲介の件数」という項目は、どこにもありません。
さらに、表の注記には「両手・片手仲介とも件数は1件としてカウント」と書かれています。公表されている取扱件数からは、その取引が両手だったのか、片手だったのかを区別できないのです。
つまり、「両手取引比率50.90%」は、誰かが両手仲介の件数を数えて集計した調査結果ではないということです。
では、この小数点以下2桁まで示された数字は、どこから出てきたのでしょうか。
なお、両手仲介そのものの仕組み——なぜ不動産会社の利益が大きく膨らむのか——は、▶︎『両手仲介とは?会社の利益が約2.5〜3.5倍に膨らむ仕組み|片手仲介との違い』で詳しく解説しています。
この記事では、ここから「数字の作られ方」に集中して見ていきます。
掲載値を再現してみる|使われていた計算式は1本だけ
手がかりは、ダイヤモンド自身が注記に書いています。「手数料率は、手数料収入を取扱高で割ったもの」。この一文をもとに、掲載値を再現してみます。電卓があれば、誰でも同じ計算ができます。
手順1:手数料率を計算する
住友不動産ステップの2024年度の数字を、住宅新報の表から拾います。手数料収入714億2,900万円、取扱高1兆4,343億9,000万円。
71,429百万円 ÷ 1,434,390百万円 = 4.98%
ダイヤモンドの掲載値「手数料率4.98%」と一致しました。
手順2:両手取引比率に変換する
片手仲介の手数料上限は、売買価格の3%+消費税=3.3%です。売主と買主の両方から受け取る両手仲介なら、その2倍の6.6%になります。
そこで、全部の取引が片手なら会社の手数料率は3.3%に、全部が両手なら6.6%に近づくはず——その間のどこにいるかで、両手の割合を推し量るという発想です。式にするとこうなります。
両手取引比率 =(手数料率 − 3.3%)÷ 3.3%
住友の数字を入れます。(4.98% − 3.3%)÷ 3.3% = 50.90%。掲載値とぴったり一致しました。
ゆめ部長はこの式で、4社×7年分=28組をすべて計算しました。結果は、ダイヤモンドが現在掲載している値とも、過去の記事や転載サイトに残る当時の掲載値とも、すべて一致しました(差は四捨五入の範囲です)。
ここまでで、1つ目の事実が確定します。この比率は「調査の結果」ではなく「割り算の結果」です。 割り算そのものは間違っていません。問題は、この割り算で実際の両手仲介の割合を言い当てられるのか、です。
4社×7年分を再計算した結果【一覧表】
今回は、三井不動産リアルティグループ・東急リバブル・住友不動産販売(現・住友不動産ステップ)・野村不動産ソリューションズの4社に絞って検証します。
この4社を選んだのは、住宅新報で2019〜2025年度のデータを継続して確認でき、ダイヤモンドの「両手取引比率」も複数年度で追えるからです。ダイヤモンドの表に載る33社すべてを比較することが目的ではなく、「手数料収入÷取扱高」から実際の両手取引比率を推計できるのかを確かめることが目的です。なお、三菱地所は2024年度から2社(三菱地所リアルエステートサービス・三菱地所ハウスネット)が「三菱地所グループ」に統合されて集計単位が変わり、時系列で比較できないため対象から外しました。
同じ式で7年分を計算した結果がこちらです(上段=推計両手率、下段カッコ内=手数料率)。
| 会社 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 三井 | 44.42% (4.77%) | 48.76% (4.91%) | 44.29% (4.76%) | 43.82% (4.75%) | 43.49% (4.74%) | 38.42% (4.57%) | 41.67% (4.68%) |
| 東急 | 43.37% (4.73%) | 43.05% (4.72%) | 37.38% (4.53%) | 37.50% (4.54%) | 29.10% (4.26%) | 32.61% (4.38%) | 29.29% (4.27%) |
| 住友 | 57.84% (5.21%) | 52.26% (5.02%) | 48.61% (4.90%) | 57.47% (5.20%) | 52.63% (5.04%) | 50.90% (4.98%) | 49.22% (4.92%) |
| 野村 | 22.12% (4.03%) | 17.76% (3.89%) | 25.10% (4.13%) | 29.34% (4.27%) | 18.42% (3.91%) | 21.97% (4.02%) | 20.02% (3.96%) |
出所:住宅新報「売買仲介実績」各年度版(2019〜2025年度)をもとに当サイトで計算。2020〜2024年度は、ダイヤモンド不動産研究所が各時点の記事で掲載していた値と一致することを確認済み。2019年度と2025年度は、ダイヤモンドの掲載を確認できていないため、同じ方法による当サイトの再計算値です。
1つ、事実として指摘しておきます。住宅新報は2026年5月26日号で、すでに2025年度の実績を公表しています。しかしダイヤモンドの記事は、2026年8月18日に更新された現在も、元データが2024年度のままです。2025年度の数字で計算し直すと、上の表のとおり住友は49.22%、三井は41.67%になります。
4社そろって下がっている——でも「両手仲介が減った」と読むのは早い
この表を見て、あることに気づきませんか。2019年度と2025年度を比べると、4社とも推計両手率が下がっています。 三井は約2.8ポイント、東急は約14.1ポイント、住友は約8.6ポイント、野村は約2.1ポイントの低下です。
「大手各社で両手仲介が減ったんだ」と考えたくなります。しかし、そう読むのは早いです。同じ期間に、別の数字が大きく動いているからです。4社すべてで、1件当たりの取扱高(=取引した物件のおおよその平均価格)が5〜6割も上がっています。
| 会社 | 2019年度 | 2025年度 | 上昇率 |
|---|---|---|---|
| 三井 | 約4,165万円 | 約6,317万円 | 約52% |
| 東急 | 約4,978万円 | 約7,557万円 | 約52% |
| 住友 | 約3,414万円 | 約5,160万円 | 約51% |
| 野村 | 約9,168万円 | 約1億4,912万円 | 約63% |
この平均価格の上昇は、推計両手率を押し下げる要因になります。仲介手数料の上限は「3%+6万円+消費税」です。この「+6万円」は、物件価格に関係ない固定額です(詳しくは次の章で説明します)。物件価格が上がるほど、+6万円が手数料率に与える影響は薄まります。その結果、実際の両手仲介の件数がまったく変わらなくても、平均価格の上昇→手数料率の低下→推計両手率の低下、という動きが起きるのです。
実際、「+6万円」だけが作り出す”架空の両手率”を計算すると、4社とも下がっています。三井は約4.8%→約3.2%、東急は約4.0%→約2.6%、住友は約5.9%→約3.9%、野村は約2.2%→約1.3%です。
ただし、正直に書きます。この「+6万円効果の縮小」で説明できる低下は、三井で約1.6ポイント、東急で約1.4ポイント、住友で約2.0ポイント、野村で約0.8ポイント分にすぎません。三井と野村の低下はかなりの部分を説明できますが、東急の14.1ポイント、住友の8.6ポイントの低下は、これだけでは説明しきれません。 そこには、収入の構成の変化、手数料の値引き、取引の中身の変化など、別の変数が動いている可能性があります。
つまり、こういうことです。「比率が下がった」という変化ひとつでさえ、両手仲介の件数の増減だけでは説明がつかない。 それがこの式の性質です。何が混ざっているのか、次の章で1つずつ見ていきます。
なぜ「手数料率」を「両手率」に変換できないのか|式に混ざる4つの要因
要因1:「+6万円」の存在|片手100%でも手数料率は3.3%を超える
仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」、税込にすると「3.3%+6万6,000円」です。ダイヤモンドの式は「片手=3.3%」を土台にしていますが、実際には+6万6,000円がある分、片手仲介100%・上限満額でも、手数料率は必ず3.3%を超えます。
たとえば1,000万円の物件なら、手数料は33万円+6万6,000円=39万6,000円。手数料率は3.96%です。これを式に入れると(3.96 − 3.3)÷ 3.3 = 20%。両手仲介を1件もしていないのに、「両手率20%」が生まれます。
| 平均価格 | 実際の両手率 | 式が出す”架空の両手率” |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 0% | 約20% |
| 2,000万円 | 0% | 約10% |
| 3,000万円 | 0% | 約6.7% |
| 5,000万円 | 0% | 約4% |
| 1億円 | 0% | 約2% |
平均価格が低い会社ほど、+6万円のかさ上げで推計両手率が高く出ます。
これは、どの会社にも同じだけ効くわけではありません。2024年度の1件当たり取扱高は、住友が約4,627万円、三井が約5,823万円、東急が約6,778万円。そして野村は約1億3,320万円と、1社だけ突出しています。+6万円が作る架空の両手率は、住友の価格帯なら約4.3%、野村の価格帯なら約1.5%。同じ物差しのはずが、会社によって目盛りの狂い方が違うのです。
要因2:賃貸の収入が混ざっている会社がある
ここが、今回の検証でいちばん見過ごされていると感じた点です。
この表の数字は、住宅新報のアンケートに各社が回答したものです。そのため、「手数料収入」にどこまで含めるかの判断も、会社ごとに分かれています。
住宅新報の表は「売買仲介実績」ですが、脚注をよく読むと、分子の「手数料収入」に売買以外の収入が入っている会社があります。 脚注にはこうあります(2024年度版)。
- 三井不動産リアルティグループ:売買仲介手数料に賃貸仲介手数料・賃貸管理収益・関連収益等を含む
- 東急リバブル:手数料収入に賃貸仲介・賃貸関連収益を含む
- 住友不動産ステップ:手数料収入に賃貸仲介を含む
この種の脚注は2019年度版から一貫して付いています。一方、分母の「取扱高」は売買の取扱高です。つまり三井・東急・住友の「手数料率」は、正確に書くと「(売買の手数料+賃貸などの収入)÷ 売買の取扱高」。分子と分母の範囲がそろっていません。
賃貸の収入は、売買の両手仲介とは何の関係もありません。しかし、この式では手数料収入が増えれば手数料率も上がるため、賃貸の収入まで推計両手率を押し上げる要因になります。仮に純粋な売買の手数料率が4.0%の会社なら、式の答えは約21.2%。そこに賃貸関連の収入が乗って見かけの手数料率が4.5%になると、答えは約36.4%に跳ね上がります。両手仲介は1件も増えていないのに、推計両手率が約15ポイント上がる計算です。
ちなみに、野村にはこの種の脚注が付いていません。ここは後の章で効いてきます。
要因3:手数料の値引きは、逆方向に働く
実務では、すべての取引で上限満額の手数料を受け取るわけではありません。紹介やリピーターのお客さま、高額物件での交渉、会社としての割引サービス——手数料を値引く場面はいくらでもあります。
値引きをすれば手数料率は下がります。つまり、実際には両手仲介をしていても、値引きが多ければ推計両手率は低く出ます。 +6万円や賃貸収入とは、逆方向に働く要因です。
要因4:法人・大型案件の報酬率は、両手仲介とは別の理由で動く
住宅新報の数字は会社全体の集計なので、個人の住まいの売買だけでなく、法人間の大型取引や投資用物件の仲介も混ざりえます。こうした大型案件の手数料率は、案件の規模や交渉しだいで、個人向けの水準より高くも低くもなります。つまり大型案件の混ざり方しだいで、会社全体の手数料率は、両手仲介の件数と関係なく上にも下にも動くのです。これは4社のどこにでも起こりうる揺れです。その揺れ方を自社の開示資料で具体的にたどれる例として、次の章では野村を見ていきます。
4つの要因を1枚にまとめると
| 要因 | 推計両手率への働き |
|---|---|
| +6万円(固定額の上乗せ) | 上振れ ↑(平均価格が低い会社ほど大きい) |
| 賃貸関連収入の混入 | 上振れ ↑(三井・東急・住友に脚注あり) |
| 仲介手数料の値引き | 下振れ ↓ |
| 法人・大型案件の報酬率 | 上下どちらにも ↑↓(案件しだい) |
さらに、平均取引価格・リテールと法人の構成・年度ごとの取引の中身が、それぞれの要因の影響量を変えます。
だから、この推計は「常に高く出る」わけでも「常に低く出る」わけでもありません。会社と年度によって、上にも下にもズレる。 ズレの向きも大きさも、外からはわからない——それがこの式の正体です。
野村21.97%への違和感|低すぎる数字を調べてわかった3つのこと
ゆめ部長がこの検証を始めた直接のきっかけは、野村の数字でした。業界20年の現場感覚では、両手仲介の少なさで野村が他の大手からこれほど突出しているという印象はありません。ただし、先に書いておきます。ゆめ部長の経験だけで、野村の実際の両手仲介比率が何%なのかを証明することはできません。 だからこそ、感覚ではなく構造を調べました。すると、野村の数字が低く出る理由が3つ見つかりました。
理由1:平均取引価格が突出して高く、「+6万円」の上振れが最小
野村の1件当たり取扱高は、2019年度の約9,168万円から2025年度の約1億4,912万円まで、一貫して4社の中で突出して高い水準です。要因1で見たとおり、平均価格が高いほど+6万円による推計両手率の上振れは小さくなります。2025年度の野村では約1.3%と、4社で最小です。
理由2:賃貸収入による上振れが確認できない
三井・東急・住友には「手数料収入に賃貸関連の収入を含む」という脚注が付いていますが、野村には付いていません。他の3社にある上振れ要因が、野村では確認できないのです。
理由3:会社全体の数字に、個人向け仲介とは別世界の取引が大きく混ざっている
野村不動産ホールディングスのIR資料では、売買仲介事業を「リテール(個人のお客さま中心)」「ミドル(中堅・中小企業、企業オーナー、富裕層等)」「ホールセール(大企業、ファンド、海外投資家向け)」の3つに分けて説明しています。つまり住宅新報に載る野村の数字は、個人の住まいの仲介だけでなく、大型の法人・投資家向け取引を丸ごと含んだ会社全体の数字です。
その規模は、野村自身が開示しています。2026年3月期の仲介手数料は、リテールが329億円、ミドルが161億円、ホールセールが137億円(野村不動産ホールディングス「2026年3月期 決算説明資料」2026年4月24日)。個人のお客さま向けのリテールは全体の約半分で、残りの約半分はミドルとホールセールの取引です。
ここで重要な事実があります。野村自身が決算説明資料の中で、たとえば「リテールにおける売買仲介取扱高・取扱件数の増加、ホールセールにおける取扱件数の増加および手数料率の上昇により」増収した、と説明しているのです(野村不動産ホールディングス「2025年3月期第2四半期決算説明資料」2024年10月25日)。ホールセールの手数料率が動けば、会社全体の手数料率も動きます。つまり、会社全体の手数料率は、両手仲介の件数とは無関係の理由でも変わる——野村自身の開示からも、それが確認できます。
だから、先ほどの一覧表で野村の推計値が17.76%→29.34%→18.42%と大きく揺れているのを見て、「両手仲介が増えて、減った」と読むことはできません。取引の構成が変わっただけでも、この数字は動きます。
実は、ダイヤモンド自身もこの問題を知っています。記事の注記には、東京建物不動産販売など5社を「法人取引などの大型物件が多いなどの理由により、手数料利率が3.3%から6.6%に収まっていないため、除外した」とあります。法人・大型案件が多いと3.3〜6.6%という物差し自体が成立しなくなる——それを認識した上で、範囲に収まった会社はそのまま両手取引比率に変換しているのです。 野村は、大量のミドル・ホールセール取引を含みながら、会社全体の手数料率がたまたま範囲内に収まっているため、表に残っている代表例だとゆめ部長は考えています。
この数字を「囲い込み率」と読むのは二重に危険
ここまでで、「推計両手率=実際の両手率ではない」ことを見てきました。最後にもう一段、大事な線引きがあります。両手仲介と囲い込みは、別のものです。
両手仲介は、1つの会社が売主と買主の両方を仲介すること。それ自体は違法ではありません。囲い込みは、両手仲介をねらって物件情報を意図的に止め、他社からの購入希望を断る行為です。両手仲介の結果がすべて囲い込みから生まれるわけではありません(囲い込みの定義と全体像は▶︎『不動産の囲い込みとは?売主を裏切る仕組みの全体像|業界20年のプロが解説』にまとめています)。
ところが現実には、「囲い込みが蔓延?!」というタイトルとこの比率表がセットで引用され、「住友は囲い込み50%」という読み方で広まっています。冒頭の売主さまの「住友さんは囲い込みをするんですよね。野村さんはしないと聞きました」も、まさにこの読み方でした。ダイヤモンドの記事のまとめにも「両手比率が高い会社は囲い込みを行っている可能性が高い」と書かれています。
実際に、Xではこの表の数値だけが出典の記載なしに投稿され、リプライ欄には「囲い込み率?」と読む反応や、出どころを尋ねる反応が並んでいます(2026年8月時点)。数字は、作られ方から切り離された瞬間に、独り歩きを始めるのです。
整理すると、この読み方には二段階の飛躍があります。一段目:この比率は実際の両手件数を数えた数字ではない。二段目:仮に両手率がわかったとしても、それは囲い込み率ではない。 実際の両手件数ですらない推計値を「囲い込み率」として受け取るのは、二重に危険です。
そして、この飛躍は逆向きにも働きます。ここまで見てきたとおり、値引きが多い会社や平均価格が高い会社は、実際の両手仲介の多さと関係なく、推計値が低く出ます。その数字を見て「この会社は囲い込みをしていない」と安心するのも、同じ飛躍です。
数字で会社を選別するより、囲い込みできない売り方で守る
7年分の元データを調べ切って、ゆめ部長がたどり着いた結論はこうです。公表されているデータから、各社の実際の両手仲介比率や囲い込みの実態を証明することはできません。 それは「大手は囲い込みをしていない」という意味ではありません。囲い込みは実在します。ただ、この比率表で会社を選別しても、囲い込みは避けられない、ということです。
では、売主さまはどうやって身を守ればいいのでしょうか。数字で会社を見分けるのではなく、囲い込みそのものを仕組みで封じる方向です。
- 囲い込みの具体的なやり口を知っておく → ▶︎『不動産売却の囲い込みの見抜き方|業者の手口30選を6パターンで分類』
- 媒介契約の前後でやるべきことを押さえる → ▶︎『不動産売却の囲い込み対策30選|やるべきこと・避けるべきことを完全網羅』
- そもそも囲い込みができない売り方を選ぶ → ▶︎『「囲い込みしません」を信じられますか?|囲い込みできないオープン売却プラン』
最後に、実務経験の話を少しだけ。このランキングを見ると、ゆめ部長が仲介の最前線で感じてきた現場感と比較的近い会社もあります。一方で、「本当にこの程度なのか」と引っかかる会社もあります。ただし、ゆめ部長の経験だけで各社の実際の両手仲介比率を証明することはできません。だからこそ今回、住宅新報の元データまでさかのぼり、この数字がどのように作られているのかを確認しました。
複数の上振れ要因と下振れ要因が混ざった推計値を、小数点以下2桁までの「両手取引比率」として、そのまま受け取ってよいのでしょうか。数字は、作られ方を知ってはじめて、読めるようになります。
よくある質問
両手仲介=囲い込みの結果、とは言えません。売却活動にしっかりリソースを割く会社は、自社の広告やお客さまネットワークで買主さまが見つかる場面が多く、囲い込みをしなくても両手仲介は自然に増えます。問題は両手仲介の多さではなく、他社からの購入希望を意図的に止めているかどうかです。見分けるための行動チェックは▶︎『不動産売却の囲い込みの見抜き方|業者の手口30選を6パターンで分類』で解説しています。
会社の集客方法と商圏によって変わる、というのが業界20年のゆめ部長の感覚です。都心部では、買主さまが他社経由でも次々に現れるため、片手仲介が増えやすくなります。一方、不動産会社の数が少ない地方では、自社で買主さまを見つける場面が増えるため、囲い込みをしなくても両手仲介の割合は自然に高くなる傾向があります。ただし、これを数字で証明する公表データは存在しません。
まとめ|数字の作られ方を知れば、数字に振り回されない
- ダイヤモンドの「両手取引比率」は、両手仲介の件数を数えた数字ではなく、手数料収入÷取扱高から作られた推計値
- 式には「+6万円」・賃貸関連収入・手数料の値引き・法人大型案件という、両手仲介と関係のない要因が混ざっている
- 4社そろって比率が下がった動きさえ、両手件数の変化だけでは説明できない(平均価格が5〜6割上昇した影響が混ざる)
- 実際の両手率・囲い込み率は公表データから証明できないため、数字で会社を選別せず、囲い込みできない売り方で守る
「住友の囲い込み50%」の正体は、住宅新報の数字から作られた推計値でした。手数料収入を取扱高で割って手数料率を出し、さらに(手数料率−3.3%)÷3.3%という1本の式に通して計算されています。式には+6万円・賃貸収入・値引き・法人案件という、両手仲介の件数と関係のない要因が混ざっています。4社そろって比率が下がったという変化ひとつでさえ、両手件数の増減だけでは説明できませんでした。数字を否定するためではなく、数字を正しく読むために、作られ方まで確かめる——この記事がその材料になればうれしいです。
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