低廉な空き家等(800万円以下)は仲介手数料が最大33万円|適用条件と計算例

低廉な空き家等(800万円以下)は仲介手数料が最大33万円 MAX 33万円

2024年7月1日から、不動産の仲介手数料の制度が変わりました。800万円以下の「低廉(ていれん)=価格が安い」な空き家等を売却する場合、不動産会社が売主さまや買主さまから受け取れる報酬は、原則による上限を超えて「33万円(税込)」まで受領できるようになりました。

この記事では、「低廉な空家等の媒介の特例」について、売主さま向けにわかりやすく解説します。あわせて、特例によって仲介手数料の上限が引き上げられた今でも「買い取りますよ」と提案されてしまう理由を、不動産の現場目線でお伝えします。

▼この記事でわかること(結論)
  • 800万円以下の物件は仲介手数料の上限が33万円(税込)になる
  • 適用には媒介契約締結時の説明と合意が必要
  • 空き家に限らず居住中の家や土地も対象になる
  • 安い物件は仲介より買取のほうが不動産会社は儲かる

それでは、不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は財閥系大手仲介会社から中小の不動産会社まで複数の会社で経験を積み、現在は売却専門の「真っ直ぐ不動産」を運営しています。大手・中小の両方を知るからこそ語れる「仲介と買取の損得」をお伝えします。

※本記事は2026年8月の最新情報に対応しています。

仲介手数料はどれだけ変わる?具体的な計算例

まず、300万円の物件を売却するケースで、仲介手数料の上限額がどれだけ変わるのかを比較してみましょう。

【原則通りの計算方法】

200万円×5.5%+100万円×4.4%=15.4万円

【特例による計算】

800万円以下の物件:33万円

【アップした金額】

33万円-15.4万円=17.6万円

物件価格ごとの違いも見てみましょう。

  • 200万円の物件 → 22.0万円増
  • 400万円の物件 → 13.2万円増
  • 600万円の物件 → 6.6万円増
  • 800万円の物件 → 変更なし

こうして比べると、物件価格が安いほど仲介手数料の増加額が大きくなることがわかりますよね。

原則通りの計算方法については、次の記事の自動計算ツール&早見表で確認できます。物件価格ごとの具体的な金額もチェックしてみてくださいね。

不動産売却の仲介手数料|自動計算ツール&早見表【1000万〜2億円】

特例の要件

「低廉な空家等の媒介の特例(空き家等に係る媒介報酬規制の見直し)」の主な要件をまとめます。

対象物件

  • 物件価格が800万円以下(税抜)
  • マンション・一戸建て・土地(種類は問わない)
  • 空室・居住中(使用状態も問わない)

重要な手続き

  • 媒介契約締結時に報酬額について説明する
  • 依頼者からの合意を得る
  • 媒介契約書に明記するべき

媒介契約そのものの基礎知識については、次の記事で詳しく解説しています。

媒介契約とは?3種類の違いと締結の流れ|売却のプロが解説

なぜ仲介手数料の上限額が引き上げられたのか?

この改正の目的は、空き家問題への対策です。国土交通省の公式発表では、「不動産業による空き家対策推進プログラム」の一環として、空き家等の流通のビジネス化を支援するための取り組みとされています。

では、なぜ仲介手数料の上限額を引き上げることが、空き家問題の解消につながるのでしょうか?ここからは、不動産の現場で起きている「本当の話」も交えながら解説します。

不動産会社の報酬である仲介手数料は、基本的に物件価格が高ければ高いほど増え、物件価格が低ければ低いほど減ってしまいます。

特例を使わず、原則通りに仲介手数料を計算した場合で考えてみましょう。

■ 200万円の物件 
  200万円×5.5%=11万円

■ 5,000万円の物件 
  5,000万円×3.3%+6.6万円=171.6万円

※どちらも税込・片手の金額です。400万円を超える物件は「物件価格×3.3%+6.6万円」の速算式で計算します。

不動産取引は、物件価格が高いから難しく、安いから簡単という仕事ではありません。むしろ、価格が安い物件のほうが難しいケースもあります。それにもかかわらず、200万円の不動産と5,000万円の不動産では、受け取れる報酬額が15倍以上も変わってしまうのです。

5,000万円の不動産ならニコニコお手伝いできても、300万円の物件だと「できれば売却依頼を受けたくないな…」と考える不動産会社が出てくるのは、ある程度は仕方がないことだと思います。業務負担と比較して収益性が低ければ、ビジネスとして取り扱うのは難しいですからね。

しかし、不動産会社が低価格の物件を扱いたがらなくなれば、不動産の「流通性」は下がってしまいます。売りたい人がいる、買いたい人もいる。それなのに、間をつなぐ不動産会社が動けなければ、取引そのものが成立しづらくなってしまいます。

そこで、不動産会社が受け取れる報酬額をボトムアップ(底上げ)することになったわけです。

報酬額アップは空き家問題対策につながる

物件価格が800万円以下の不動産は、日本中にたくさん存在しています。真っ直ぐ不動産のように東京都の新宿駅から90分圏内をメインにしていると目にする機会は少ないですが、地方には、売りたくても買い手が見つからない低廉な不動産が数多くあります。

「空き家問題」という言葉を聞いたことがある方も多いですよね。人口が減少し、都市部への人口集中が進んだことで、地方を中心に使われないまま放置されている空き家が増えています。

2023年10月1日時点のデータ「総務省:令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」では、日本の空き家は900万2千戸あります。2018年(848万9千戸)と比べて51万3千戸増加し、過去最多となりました。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も13.8%で、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高となっています。

空き家は、犯罪防止・自然災害への防災対策・近隣トラブル防止という面からも、できるだけ数を減らしていく必要があります。そのためには、空き家を必要としている人へ所有権を移し、有効活用してもらうことも大切です。

その対策の1つとして、請求できる報酬額を引き上げ、不動産会社が低価格の物件でも仲介しやすくしたわけですね。方向性としては、適切な判断だったと思います。

ただ、これで問題がすべて解決したかというと、そうではありません。ここからは、特例ができた後も現場で起きていることをお話しします。

仲介手数料が33万円に上がっても、買取を提案する理由

2024年7月の改正によって、低価格の物件では仲介手数料の上限額が大幅に引き上げられました。たとえば、10万円の物件なら原則5,500円だった上限額が最大33万円になります。売却価格よりも仲介手数料の上限額のほうが高くなるケースまで出てきたのです。

それでも、安い物件が積極的に仲介で扱われるようになったかというと、そう簡単ではありません。仲介手数料には、上限があるからです。

200万円の物件で比べてみましょう。

  • 原則通り 片手11万円/両手22万円
  • 特例あり 片手33万円/両手66万円

66万円になるのは、売主さま・買主さまの両方を1社で担当する「両手」の場合だけです。買主さまを他社が見つけた「片手」なら33万円。現場の感覚でいうと、これでもかなり厳しいラインです。

では、同じ物件を「仲介する」のではなく、不動産会社が「買い取って売る」とどうなるでしょうか。

たとえば、200万円の物件を50万円で買い取り、50万円かけてリフォームして、300万円で売れたとします。原価100万円に対して売値300万円ですから、単純計算では200万円が残ります。

片手仲介の33万円と比べれば約6倍。両手の66万円と比べても約3倍です。

仲介手数料には上限がありますけど、転売の利益に上限はありません。

安い物件で「うちが買い取りますよ」と提案された場合、仲介よりも買取のほうが不動産会社にとって利益を出しやすいことが背景にあるかもしれません。

仲介なら、どれだけ手間をかけても受け取れる仲介手数料には上限があります。一方、不動産会社が安く買い取り、リフォームなどをして高く売却できれば、その差額が利益になります。つまり、仲介手数料には上限がありますが、買取・転売による利益には上限がありません。

さらに、不動産会社がいったん自社名義で買い取らなくても、転売利益を得る方法があります。「第三者のためにする契約」、業界で「三為(さんため)」と呼ばれている手法です。

三為では、売主さまから最終的な買主さまへ所有権が直接移るため、間に入る不動産会社は所有権の登記をしません。手付金だけを入れて次の買主さまを探すこともできるため、仕入れ資金や在庫を抱えるリスクを抑えながら、売買価格の差額から利益を得ることができます。

問題は、売主さまから見ると、通常の仲介なのか、買取なのか、三為なのかを判断しづらいことです。

もちろん、買取そのものが悪いわけではありません。早く現金化しやすく、契約不適合責任を免責にできることも多いため、買取を選ぶメリットはあります。

ただし、「安い物件だから、このくらいの買取価格でも仕方ない」と決めてしまう前に、次の2つは確認してください。

  • 仲介で売った場合はいくらになりそうか
  • 業者の買取価格が、市場価格の70〜90%(中央値80%)という目安から大きく外れていないか

仲介で売れる価格と買取価格を比較してから選べば、相場より大幅に安い価格で手放してしまう可能性を減らせます。

不動産売却は買取と仲介どっちを選ぶべき?|判断基準と業者買取の裏側を暴露

なお、真っ直ぐ不動産には、条件がそろえば売主さまの仲介手数料が0円になる「0円売却プラン」があります。

新人でも売れる物件に仲介手数料を払いますか?|0円売却プランなら無料

宅建業法の条文もチェックしましょう!【参考】

宅建業法第46条(報酬)第1項には、次のように定められています。

宅建業者が宅地または建物の仲介をした際に受け取れる報酬額は「国土交通大臣」の定めるところによる。

では、国土交通大臣がどのように定めているかというと…

「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)において、仲介手数料の「上限」を次のように定めています。

金額区分税率
200万円まで【5.5%】
200万円超~400万円以下【4.4%】
400万円超【3.3%】

この規定は、2018年1月に一度改正され、400万円以下の物件について売主さまから最大19.8万円まで受け取れるようになりました。そして2024年7月1日からは、800万円以下の物件について、売主さま・買主さまのそれぞれから最大33万円まで受け取れるように変更されたのです。

仲介手数料の上限額そのものの考え方については、次の記事で詳しく解説しています。

売買の仲介手数料は高すぎる?|「上限=相場」のカラクリと適正価格の見抜き方

よくある質問と回答

不動産売却の仲介手数料は800万円以下なら最大33万円になるのですか?

はい、2024年7月1日からの改正で、800万円以下の物件は売主さま・買主さまそれぞれから最大33万円(税込)まで受け取ることが可能になりました。ただし、不動産会社は媒介契約締結時に報酬額について説明し、依頼者の合意を得る必要があります。合意が得られなければ、原則通りの仲介手数料が上限となります。

800万円以下の物件なら、仲介手数料は必ず33万円かかるのですか?

いいえ、33万円はあくまで上限額なので、必ず33万円かかるわけではありません。 不動産会社は、媒介契約を締結する際に報酬額について説明し、売主さま・買主さまの合意を得る必要があります。合意した金額が33万円より低ければ、その金額が仲介手数料になります。

800万円以下の物件に適用される仲介手数料の特例は、空き家以外でも適用できますか?

はい、800万円以下の物件であれば適用できます。土地・建物の使用状態は問われないため、空き家だけでなく居住中の家や土地も特例の対象になります。

800万円以下の物件に仲介手数料の特例があるのに「買い取りますよ」と提案されるのはなぜですか?

800万円以下の物件では仲介手数料の上限が最大33万円(税込)になっても、買い取って転売する場合の利益には上限がないからです。200万円の物件だと、仲介の上限は片手33万円・両手66万円。一方、安く仕入れてリフォームして売れば、それを大きく上回る利益が出ることがあります。「買い取りますよ」と提案されたら、仲介で売った場合はいくらになりそうかを必ず確認してください。

まとめ

この記事のポイント:
  • 対象は800万円以下(税抜)の宅地・建物で種類も使用状態も問わない
  • 上限は売主さま・買主さまのそれぞれから最大33万円(税込)
  • 媒介契約締結時に説明して合意を得ることが適用の条件
  • 200万円の物件だと片手33万円・両手66万円が仲介の上限
  • 「買い取りますよ」と提案されたら仲介で売った場合の金額を必ず聞く

2024年7月からの改正によって、800万円以下の物件では仲介手数料の上限額が大きく変わりました。この特例を適用する場合は、不動産会社から報酬額について説明を受け、事前に合意することが重要です。

「不動産屋の報酬が上がるなんて…とんでもないことだ!!」と感じた方もいるかもしれません。でも、低価格の物件でも不動産会社がきちんと仲介できる環境をつくるためだと考えれば、「まぁ、ちょっとくらい上がるのは仕方がないかもね。」と思ってもらえたのではないでしょうか。

ただし、特例ができても「買い取りますよ」と提案される状況がなくなったわけではありません。「安い物件だから仕方ない…」とあきらめる前に、仲介で売った場合はいくらになりそうなのかを必ず確認してくださいね。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

【参考】

・国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム」(2024年6月21日策定)
・総務省「令和5年住宅・土地統計調査」

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