「購入希望者がいます」は嘘?|不動産査定の営業トークを見抜く方法
不動産査定で「このマンション限定で探しているお客様がいます!」という営業トーク、心が揺れていませんか?
結論から言います。「購入希望者がいます」は、ほとんどの場合ウソです。営業マンが売却依頼を取るための常套句であり、嘘を組織的にカバーする仕組みまで存在します。
- 「購入希望者がいます」は、差別化できない不動産会社が売却依頼を取るためについるウソ
- ウソがバレないように「ダミー案内」が組織的に行われている
- 大手仲介会社の営業会議で実際に聞いた、ダミー案内の手口を暴露
- 査定の場で使える「嘘を見抜く5つのチェックポイント」
- 顧客名簿・ウェイティングリストの正体は「買えない人リスト」
実は、この営業トークの裏側では、ダミーの内覧を仕込み、見送りの理由まで事前に用意するという手口が日常的に行われています。不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が解説します。ゆめ部長は大手金融グループの不動産会社に勤務した経験があり、営業会議でダミー案内を指示する現場を実際に見てきました。
※本記事は2026年3月の最新情報に対応しています。
→ 不動産会社の選び方の基礎知識は「マンション・家の売却はどこがいい?|不動産会社の選び方5つの基準」で詳しく解説しています。
なぜ営業マンは「購入希望者がいます」とウソをつくのか?
営業マンがウソをつくのは、個人のモラルの問題ではありません。売却依頼の争奪戦という構造が、ウソを生み出しています。
【 このセクションのポイント 】
ほとんどの不動産会社には差別化できるサービスがありません。サービスでも担当者の実力でも勝てないから、ウソで売主の気を引くしかない──それが「購入希望者がいます」の正体です。
売却依頼の争奪戦──差別化できない会社が行き着く先
売却査定でお客さまの自宅を訪問すると、他社の営業マンが予定時間をオーバーして粘っていたり、すでに訪問を終えた不動産会社の査定書がテーブルに何冊も置いてあったりします。売主さまが2〜3社に声をかけるのはあたり前で、10社以上に依頼していることもあります。
これだけ競合しているにもかかわらず、ほとんどの不動産会社には差別化できる「魅力的なサービス」がありません。会社のサービスが劣る分をカバーしなければいけない担当者にも、知識・経験・情熱が不足しています。
会社のサービスもイマイチ、担当者の実力もイマイチ。当然、売主さまの記憶には残りません。こんな苦い経験を何度も繰り返すうちに、「ウソをついてでも案件を取ろう」と考えるようになるのです。
ゆめ部長は、ウソをつく前にこの2つを見直すべきだと思っています。
- 売却サービスの内容を磨き直す
- 営業マンのレベルアップに投資する
しかし、それには時間もコストもかかります。だから安易に「ウソ」に頼る会社がなくならないのです。
「ウチに任せれば、次の土日にご案内できます」──心が揺れる殺し文句
売主さまの心を掴むウソの営業トークには、いくつかのバリエーションがあります。
- 「弊社にはこのマンション限定でお探しのお客様がいますから、お任せいただければ、次の土日にでもご案内することができます」
- 「前回このマンションを買い逃したお客さまが登録していて、売りに出るのを待っています」
- 「ウェイティングリストに登録されている方が何組もいらっしゃいます」
共通しているのは、「すぐに買主が見つかる」と思わせることです。初めての売却で不安な売主さまほど、「すぐに案内してくれるなら安心だ」と心が揺れてしまいます。
ゆめ部長も、この営業トークに負けた経験があります。
ある査定で競合した際、売主さまからこう言われました。
「駅前に店舗がある地域密着の会社だし、担当の○○さんはこのマンションを5回も契約したことがあるらしいの。それでね、前回買い逃した人が登録していて売りに出るのを待っているらしいのよ!だから、今回は縁がなかったということで。」
結果は…しばらく売れませんでした。
追跡調査はしなかったのでその後はわかりません。ただ、少なくとも「次の土日にご案内できます」と言っていたはずの購入希望者は、すぐには契約に至らなかったということです。
営業マンは毎月ノルマに追われています。苦しくなるとウソくらいついてしまいます。もしかしたら「ウソをついてでも案件を取ってこい!」と上司に怒鳴られて仕方なくやっているのかもしれません。
問題は、このウソが「バレないようにカバーされる仕組み」まで存在することです。次のセクションで、その手口を暴露します。
ウソはこうやってカバーされる──ダミー案内の手口を暴露
「購入希望者がいます」と言った以上、実際に案内をしなければウソがバレます。そこで登場するのが「ダミー案内」です。大手仲介会社に勤務していたゆめ部長が、営業会議で実際に見た手口を3段階で暴露します。
【 このセクションのポイント 】
ダミー案内は「個人の悪事」ではなく「組織的な手口」です。営業会議で上司が指示を出し、社内で口裏合わせが行われ、見送りの理由まで事前に準備されています。
大手仲介会社の営業会議で聞いた衝撃の会話
ゆめ部長が大手仲介会社に勤務していた時の話です。ある日の営業会議でこんなやり取りがありました。
上司:「〇〇(営業マンの名前)が預かったマンションだけどな、チラシ入れたけど1件も案内が入らないんだよ。ウチにお客さまがいると言っちゃったから、誰かダミーで案内入れろよ!」
社内の営業マン:「それじゃあ、昨日来店したお客さんを案内しましょうか? ちょうど案内する物件がなかったので、『今後の参考のために見ておきましょう!』とか言って連れていきますよ!」
これが、大手仲介会社の営業会議で交わされている会話の実態です。
なぜダミー案内はバレないのか
「すぐにバレそう」と思うかもしれません。しかし、まずバレません。理由は2つです。
理由1:買主候補はあっさり協力してくれる。
マイホームを探し始めたばかりのお客さまは、予算オーバーの物件も含めてとにかくいろいろ見てみたいものです。「このマンション限定で探していることにしてください」という口裏合わせくらい、あっさりと協力してくれます。
理由2:売主さまは確認しようがない。
売主さまから「なんでこのマンション限定なんですか?」と内覧に来た買主候補に直接質問することはまずありません。仮に質問があっても、営業マンが間に入って適当に回答してしまえばウヤムヤにできます。
こうして「購入希望のお客さまを実際に案内した」という実績が作られます。
「見送りの理由」は事前に用意されている
ダミー案内ですから、当然契約にはなりません。売主さまに報告するための「見送りの理由」が必要です。
営業マンが使う理由のバリエーションを紹介します。
- 「両親と同居することになり、4LDKを探すことになったそうです」
- 「子どもが走り回るから戸建てを探すことになりました」
- 「駐車場のサイズが合わないことが判明しました」
- 「長期修繕計画を見たら不安になってしまったようです」
- 「風水のアドバイスで今年は自宅から東南側がいいようです」
営業マンからの報告はこうなります。
「〜〜〜という理由で、今回は見送ることになってしまいました。他のお客さまもいますし、広告活動も頑張っていますから、次に期待しましょう!!」
最初は「ホントかよ!?」と疑っていても、「一生に一度の買い物だからしょうがないか…」「他のお客さんを一所懸命探してくれているし…」と受け入れてしまう売主さまが多いのです。文句を言うのも、他の不動産会社に変更するのもメンドウになってくるのかもしれません。
しかし、このまま放置すると売却期間だけが長引きます。長引いた先に待っているのは「値下げしましょう」という提案です。営業マンの都合で売却が遅れたのに、そのツケを売主さまが払わされる──これが「購入希望者がいます」というウソの実害です。
「購入希望者がいます」を見抜く5つのチェックポイント
手口を知ったら、次は見抜く方法です。査定の場で実際に使える具体的な質問・確認ポイントを5つ紹介します。
【 このセクションのポイント 】
「購入希望者がいます」が本当かウソかは、具体的な質問で見抜けます。査定の場で使える5つの質問を紹介します。
①「そのお客様の購入条件を教えてください」と聞く
「購入希望者がいます」と言われたら、すぐにこう聞いてみてください。
- 「そのお客様の希望条件は何ですか? 予算・広さ・間取り・階数を教えてください」
- 「いつ頃から探していて、購入時期はいつ頃の予定ですか?」
- 「住宅ローンの事前審査は通っていますか?」
本当に購入希望者がいるなら、具体的に答えられるはずです。「個人情報なので…」と濁されたら要注意。少なくとも予算帯と希望条件の概要は、個人情報に触れずに説明できます。
曖昧にしか答えられない場合、その「購入希望者」は存在しない可能性が高いです。
②「レインズに登録してから広く募集しませんか?」と提案する
「購入希望者がいるなら、レインズ(Real Estate Information Network System、国土交通大臣指定の不動産流通機構)にも登録して広く募集すれば、もっと良い条件の買主が見つかるかもしれませんよね?」と提案してみてください。
まっとうな営業マンなら「もちろんです」と答えます。
しかし、「いや、まずは弊社のお客様にご案内してから…」「レインズに出すと他社が群がってきて面倒ですよ」と渋る場合は危険信号です。情報を囲い込んで両手仲介(売主・買主の両方から手数料を受け取る取引形態)を狙っている可能性があります。
③ 案内後の報告で「見送り理由」を深掘りする
案内が行われた後、「見送りになりました」と報告されたら、以下を確認してください。
- 「見送りの理由を具体的に教えてもらえますか?」
- 「そのお客様は他にどんな物件を検討しているんですか?」
- 「案内時の反応はどうでしたか? 具体的に何を気にされていましたか?」
ダミー案内の場合、質問を重ねるほど回答が曖昧になります。本当に案内していれば、「リビングの日当たりを気にされていました」「駅までの距離がネックのようです」など具体的な反応を報告できるはずです。
報告の具体性が、ダミーか本物かを見分けるカギです。
④ 他社にも査定を依頼して営業トークを比較する
1社だけの査定では、営業トークの真偽を判断できません。2〜3社に査定を依頼して比較すれば、不自然な点が浮き彫りになります。
ゆめ部長のお客さまの中に、4社に査定を依頼した方がいました。そのうち2社が「このマンション限定のお客様がいます」と言ってきたそうです。2社とも同じマンション限定の別のお客様がいるというのは、偶然にしてはできすぎています。お客さまは「これはおかしい」と気づき、営業トークではなくサービス内容で比較して会社を選びました。
複数社に聞いて回ること自体が、嘘への牽制にもなります。「他社さんにも査定をお願いしています」と伝えるだけで、安易なウソはつきにくくなるものです。
⑤「囲い込みしない仕組み」を持つ会社かどうか確認する
最も本質的なチェックポイントです。「購入希望者がいます」というウソの多くは、両手仲介を狙うための入口です。
査定の場でこう聞いてみてください。
「囲い込み(物件情報を他社に公開せず自社だけで取引しようとする行為)をしない仕組みはありますか?」
「囲い込みはしません」と答えるだけの会社は要注意です。「しません」は意志の表明にすぎません。約束は破られる可能性があります。
重要なのは「囲い込みができない仕組み」を持っているかどうかです。仕組みまで説明できる会社なら、「購入希望者がいます」というウソをつくインセンティブ自体が低いと判断できます。
▶︎ 囲い込みの手口4分類と見抜き方の詳細は「囲い込みとは?|両手仲介を狙う不動産業界の闇」で解説しています。
顧客名簿・ウェイティングリストを信じてはいけない理由
「弊社にはこのマンション限定で探しているお客さまが登録されています」──この営業トークの根拠になっているのが顧客名簿(ウェイティングリスト)です。しかし、その実態を知れば信じる気にはなりません。
名簿の正体=「ずっと買えていない人たちリスト」
顧客名簿に登録されている人の多くは「ずっと購入できていない人」です。バッサリ言い切ると「買えない人たちリスト」でしかありません。
さらに言えば、顧客名簿に登録されている人たちは複数の不動産会社にも登録しています。買主さまが1社だけで探しているなんて、まずあり得ません。大手のR社・S社・N社・T社だけでなく、地元の老舗会社にも登録しているのがあたり前です。
「弊社に登録しているお客さまがいます」と言われたら、「その人は他の不動産会社の名簿にも登録されているはずだ」とすぐに考えてください。
顧客登録の多さをアピールされたら、こう受け止めればいいのです。登録数が多い=購入しない人ばかり。「ずっと買わない人とお付き合いするのは大変だなぁ」と同情しておけば十分です。
情報拡散こそ高値成約の原理
顧客名簿の「狭い市場」で買主を探すのは、売主さまにとって圧倒的に不利です。レインズ+ポータルサイトの「広い市場」で情報を拡散し、多くの買主候補に競争してもらうことが高値成約の鉄則です。顧客名簿で契約を狙うということは、囲い込みをしているのと同じです。
▶︎ 「狭い市場」vs「広い市場」の詳しい解説と、情報拡散で高値成約を実現する方法は「マンション・家の売却はどこがいい?|不動産会社の選び方5つの基準」の基準②で詳しく解説しています。
嘘をつかない不動産会社の選び方
営業トークの嘘を見抜く知識を身につけたら、次は「嘘をつく必要がない会社」を選ぶ段階です。
ポイントは1つ。「囲い込みはしません」という約束ではなく、「囲い込みができない仕組み」を持っているかどうかで判断することです。
「しません」は意志の表明にすぎません。約束は破られる可能性があります。一方、たとえばオープン売却プランのように「当社が買主を見つけても手数料をもらわない契約」にすれば、囲い込みのインセンティブ自体が存在しなくなります。仕組みは破れません。
なぜこのような構造的な問題が生まれるのか──その根本には、売主と仲介会社の間にある「二重の利益相反」があります。詳しくは「マンション・家の売却はどこがいい?|不動産会社の選び方5つの基準」の基準②で解説しています。
「購入希望者がいます」と嘘をつかなくても案件を取れる会社は、サービスの質と仕組みの透明性で勝負しています。査定の場では、チェックポイント⑤で紹介した質問を使って確認してみてください。
「購入希望者がいます」に関するよくある質問(FAQ)
媒介契約は解除できます。一般媒介契約ならいつでも他社への依頼が可能です。専任媒介・専属専任媒介でも契約期間は最長3ヶ月。更新しなければ自動的に終了します。「3ヶ月間は我慢するしかない」と思い込まないでください。明らかな契約違反(囲い込み等)があれば、期間中でも解除を交渉できます。
会社の規模は関係ありません。ダミー案内の手口は大手でも中小でも行われています。ゆめ部長が実際に見た営業会議のエピソードは大手仲介会社のものです。重要なのは規模ではなく、囲い込みを「できない仕組み」を持っているかどうかです。
まとめ
- 「購入希望者がいます」は、差別化できない不動産会社が売却依頼を取るための常套句。ほとんどの場合ウソ
- ウソは「ダミー案内→見送り理由の捏造→売主が受け入れる」という3段階で組織的にカバーされている
- 5つのチェックポイントで嘘を見抜ける。特に「購入条件を聞く」「レインズ登録を提案する」が有効
- 顧客名簿・ウェイティングリストは「買えない人リスト」。狭い市場ではなく広い市場で売ることが鉄則
- 「嘘をつかない」という約束ではなく「嘘をつく必要がない仕組み」を持つ会社を選ぶ
不動産仲介の報酬は「All or Nothing」「0 or 100」です。売却依頼を受け、成約させられなければ、どんなに仕事をしても給料にはなりません。だから営業マンは必死です。
しかし、その必死さを「ウソ」で発揮するのか「サービスの質」で発揮するのかは、会社の仕組みと担当者の質で決まります。だからこそ、「約束」ではなく「仕組み」で囲い込みを防げる会社を選ぶことが最善策です。
次の3ステップ:
- ステップ1:この記事の5つのチェックポイントを手元に用意する
- ステップ2:2〜3社の不動産会社に査定を依頼し、チェックポイントで比較する
- ステップ3:「仕組み」で囲い込みを防げる会社に売却を任せる → 真っ直ぐ売却プラン
▼ 今の不動産会社に不安がある方
「本当にこの会社で大丈夫?」と感じたら、翌営業日に診断結果をお届けします。
→ 囲い込みクイック診断+セカンドオピニオン
▼ どのプランが合うか診断したい方
3つの売却プランを比較し、自分に合ったプランがわかります。
→ プラン比較・選び方
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