不動産の売買契約解除と仲介手数料|ローン解除なら0円・手付解除なら相場は半額
売買契約を締結したものの、何らかの事情で契約解除になってしまった…。そんなとき「仲介手数料は払わなきゃいけないの?」と不安になる売主さまは多いはずです。実は、解除の種類によって「払わなくていいケース」と「払うけど全額じゃないケース」があります。まずは結論から見ていきましょう。
- 白紙解除・無効・取消しの場合 → 仲介手数料は0円(払う必要なし)
- 手付解除・違約解除・合意解除の場合 → 払う必要あり(ただし全額ではない)
- 払う場合の金額は「相当報酬額」(商法512条)。弁護士サイトの相場観は手付解除なら50%程度・違約解除なら80%〜100%
- 不当な全額請求をされたら、宅建業法違反は都庁、減額の主張は弁護士に相談する
「契約解除になったら仲介手数料は全額払わなければいけない」と思い込んでいる売主さまもいますが、実は、それは誤解です。。解除の種類によって、払う・払わない・いくら払うかが変わります。
以前、売主さまから「買主さんが手付解除したんですけど、不動産会社から仲介手数料を全額請求されています。これって払わなきゃいけないんですか?」という相談を受けたことがあります。この請求額、本当に正しいのでしょうか? 多くの売主さまはこの知識がないため、言われるがまま払ってしまっているのが現実です。
不動産仲介20年超の宅建マイスター、ゆめ部長が、契約解除と仲介手数料の関係を売主さま向けにわかりやすく解説します。
※本記事は2026年5月の最新情報に対応しています。
契約解除で仲介手数料を払うかは「解除の種類」で決まる
契約解除になったとき、仲介手数料を払うかどうかは「解除の種類」によって決まります。大きく分けると3パターンです。
① 白紙解除・無効・取消し・クーリングオフ
→ 仲介手数料は0円(払う必要なし)
② 手付解除・違約解除・合意解除
→ 払う必要あり(ただし全額ではなく「相当報酬額」)
③ 契約不適合責任による解除・反社会的勢力特約による解除
→ 個別判断(落ち度の所在や経緯による)
売主さまのケースがどちらに該当するか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 仲介手数料が0円になる解除パターン
次の(1) ~ (4)の解除パターンに該当する場合、仲介手数料は0円です。すでに半金を支払っていれば全額返還されます。
(1) 白紙解除
住宅ローン特約・買替特約・引渡前の滅失毀損・譲渡承諾特約・その他特約による解除
(2) 無効
制限行為能力者との契約など、最初から有効に成立していないケース
(3) 取消し
詐欺・脅迫・消費者契約法による取消しなど
(4) クーリングオフ
売主さまが宅建業者・買主さまが消費者で、落ち着いて考えられない場所で申込みをした場合
(1) ~ (4)で解除された場合、売買契約が「最初からなかったこと」になるため、仲介手数料の請求権そのものが消滅します。標準的な媒介契約書の約款にも「融資の不成立等により契約が解除された場合、約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければならない」といった条項が明記されています。もし返還を拒否されたら、都庁や業界団体に相談しましょう。
② 仲介手数料を払う必要がある解除パターン(相当報酬額の考え方)
手付解除・違約解除・合意解除の3つは、売買契約自体は有効に成立していたものを後から解除するパターンです。だから仲介手数料の請求権は発生します。ただし、「全額」ではなく「相当報酬額」(商法512条)を払えばよいとされています。
3つの解除の定義
(1) 手付解除:
手付金の放棄(または倍返し)で契約を解除するパターン。「自己都合」による解除
(2) 違約解除(債務不履行解除):
契約上の義務違反による解除(売主さまが引き渡せない・買主さまが残代金を払えない等)
(3) 合意解除:
売主さまと買主さまの双方の話し合いによる解除
「全額」ではなく「相当報酬額」とは(商法512条)
商法512条では、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をしたときは「相当の報酬」を請求できると定められています。仲介手数料もこの「相当額」のルールに従います。「売買契約が成立したから全額請求できる」のではなく、実際に行った業務量に見合った金額だけを請求できるということです。
また、国土交通省も「仲介手数料の受領は、売買契約時に半金・引渡時に半金とするべき」という見解を示しています。契約から引渡までの業務が残っている状態で全額請求するのは、そもそもおかしいのです。
弁護士サイトでの相場観
実務上の目安として弁護士サイト(みずほ中央法律事務所)では次のような相場が紹介されています。
| 解除の種類 | 弁護士サイトでの相場 |
|---|---|
| 手付解除 | 相場=50%程度 |
| 違約解除(債務不履行解除) | 相場=80%〜100% |
| 合意解除 | 実質的な「理由」による |
合意解除は、どちらに実質的な落ち度があったか・解除に至った経緯によって個別判断になります。一律に「80%〜100%」と扱われるわけではありません。
③ 個別判断になる解除パターン(契約不適合責任・反社会的勢力特約)
次の2つは「0円」「払う」のどちらにも一律に分類できません。仲介手数料は個別判断になります。
■ 契約不適合責任による解除:
引渡後に売買契約締結時点では知らなかった欠陥が見つかり、買主さまが解除するケース。仲介手数料は支払済のため、不動産会社に落ち度があれば全額返金や一部返金が話し合いになります
■ 反社会的勢力特約による解除:
契約相手が反社会的勢力だった場合の解除。解除された側への請求権は残るが、解除する側へは請求できないなど、立場によって扱いが変わります
これらは発生頻度が低く、ケースごとに事情が大きく異なるため、当事者間の話し合いと専門家の助言で判断していくパターンです。
契約解除と仲介手数料|約款にルールがないという根本問題
ここまで読んで「結局、契約解除になったら払うのか払わないのか、はっきりしてほしい」と感じた売主さまもいるはずです。実は、それがはっきりしないのには根本的な理由があります。
ポイントは、仲介手数料が「売買契約を成立させたこと」に対する報酬だということです。
仲介手数料は売主さまと不動産会社の間の「媒介契約」に基づく義務であり、買主さまが解除した理由とは関係なく発生します。
買主さまが手付解除しても、不動産会社が売主さまのために行った業務(物件調査、販売活動、契約書作成など)がなくなるわけではありません。だから、法的には請求権が発生するのです。
ただし、ここで知っておいてほしいことがあります。
実は、標準的な媒介契約書(国交省の標準媒介契約約款)には、手付解除時の報酬について明確な取り決めがありません。
「売買契約が成立したら報酬を支払う」「融資不成立なら全額返還」という規定はありますが、手付解除・違約解除・合意解除になった場合にいくら払うかは書かれていないのです。
つまり、ルールが決まっていない。だから、実務では会社によって対応が大きく異なります。
真っ直ぐ不動産はこの根本問題を、媒介契約書の特約であらかじめ解決しています。
売買契約解除のトラブルから売主さまを守る|媒介契約特約
弁護士サイトでの相場観は「手付解除なら50%程度・違約解除なら80%〜100%」ですが、真っ直ぐ不動産は売主さまの負担をさらに軽くするため、売却の媒介契約書の特約に「最大でも約定報酬額の半額(50%)まで」とする減額ルールを明記しています。
具体的には、以下の4段階のルールです。
| 解除のパターン | 仲介手数料 |
|---|---|
| 手付解除・違約解除・合意解除 | 50%(約定報酬額の半額) |
| 上記+真っ直ぐ不動産と新規の専任媒介契約(3ヶ月)を締結して再販売 | 25%(約定報酬額の1/4) |
| 白紙解除(住宅ローン特約・買替特約・滅失毀損など) | 0%(請求権消滅) |
この記事で解説した「約款に規定がない」という問題を、特約であらかじめ解決しておく仕組みです。「全額請求されるかも…」「違約解除なら80%〜100%請求されるかも…」という不安なく売却活動を進められます。
契約解除と仲介手数料に関するよくある質問(FAQ)
払う必要はありません。住宅ローン特約による解除は「白紙解除」に該当し、仲介手数料の請求権は消滅します。すでに支払った仲介手数料があれば、全額返還されます。
はい、払う必要があります。ただし「全額」ではなく「相当報酬額」(商法512条)の範囲です。弁護士サイトでの相場観は、手付解除なら50%程度とされています。実務では会社によって対応が大きく異なります。媒介契約を結ぶ前に「契約解除になった場合の仲介手数料」を確認しておきましょう。
正当とは限りません。商法512条の「相当報酬額」の考え方では、実際に行った業務量に見合った金額のみ請求できるとされています。ただし、媒介契約書に「契約成立で全額請求できる」旨の特約がある場合は、約定通りの請求が認められる可能性もあります。減額を主張したい場合は弁護士に相談する案件になります。
不当な請求をされたときの対処法
ここまで読んで「他の不動産会社と媒介契約を結んでしまった場合はどうすればいいのか」と気になる売主さまもいるはずです。不当な請求をされたときの相談先は2つに分かれます。
1つは都庁・業界団体(宅建業法の枠組み)。白紙解除なのに請求された、半額返還を拒否されたなど、宅建業法上明らかにおかしいケースの相談窓口です。ただし都庁で聞いたところ「売買契約が成立した時点で、不動産会社は仲介手数料を100%請求できる」という見解でした。商法512条の「相当報酬額」は民事の問題なので、都庁の管轄外になります。
もう1つは弁護士(民事の問題)。「全額じゃなく相当報酬額にしてほしい」という減額の主張は、弁護士に相談する案件です。
まずは不動産会社の免許番号を確認しましょう。免許番号は「東京都知事(3)第○○○○○号」や「国土交通大臣(2)第○○○○号」といった形式で、名刺・媒介契約書・Webサイトなどに記載されています。免許番号がわかったら、下の表で該当する相談先を確認してください。
| 相談先 | 対象 | 連絡先の調べ方 |
|---|---|---|
| 東京都庁(不動産業課) | 東京都知事免許の不動産会社 | 「東京都 不動産業課」で検索 |
| 各県庁(宅建業担当課) | 各都道府県知事免許の不動産会社 | 「○○県 宅建業」で検索 |
| 国土交通省(地方整備局) | 国土交通大臣免許の不動産会社 | 「国土交通省 不動産業」で検索 |
| FRK(不動産流通経営協会) | FRK会員の不動産会社 | 大手仲介会社が加盟 |
| 全日(全日本不動産協会) | 全日会員の不動産会社 | うさぎマークが目印 |
| 全宅(全国宅地建物取引業協会) | 全宅会員の不動産会社 | ハトマークが目印 |
まとめ
- 白紙解除・無効・取消し・クーリングオフなら仲介手数料は0円
- 手付・違約・合意解除は法的に請求権が発生するが、全額ではなく「相当報酬額」
- 弁護士サイトの相場観は手付解除なら50%程度・違約解除なら80%〜100%。合意解除は実質的な「理由」による
- ルールが決まっていないからこそ、媒介契約を結ぶ前に「契約解除になった場合の仲介手数料」を確認しておくことが最大の防衛策
不動産売却は売買契約がゴールではありません。万が一の契約解除まで含めて「最後まで売主さまを守ってくれる不動産会社か」という視点で、媒介契約を結ぶ相手を選んでください。
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